第7話 7
・後輩ちゃんと体操
先輩さんと後輩ちゃんがレジを打っているときのことでした。
とてもとても胸部装甲が立派な女性のお客様がいらっしゃいました。
先輩さんはの目は平静を装いつつも、つい目線が落ちてしまいがちになっていました。
後輩ちゃんはそれを横目でしっかり確認していました。
レジが終わり、一段落つきました。
「先輩さん、おっきいおっぱいが好きなんですか?」
それは単純な質問でしたが、確実に非難の色が付いていました。
「い、いや、そんなことはないよ」
「でも、さっき見てたじゃないですか」
バレていたのか。
先輩さんは内心焦りました。
「そうじゃなくて、ほら、好きとか嫌いとかじゃなくて、つい目が行っちゃうって言うか」
「ふーん」
後輩ちゃんの目はすぅっと薄められています。
しかし、これは本当です。好きとか好きじゃないとかではなく、目の前におっきなものが来るとつい見てしまうのです。それは身長が高い人をなんとなく見てしまうことと同じなのです。
同じったら同じなのです。やましい気持ちはないのです。
「あ、ちょっと品出ししてくるね」
先輩さんが逃げました。
「もう」
後輩ちゃんは面白くないようです。
だからと言ってレジを離れて追いかけるわけにはいかないので、仕方なくレジ内で本の整理をしていました。
(むぅ。やっぱり先輩さんもおっきい方が好きなのかな)
と、そこで女性向け体操の方法が載っている雑誌を見つけました。
「……効くのかな?」
少しして先輩さんが品出しから戻ってきました。
そして腕を前で組んで体操の姿勢を取っている後輩ちゃんと目が合いました。
それはとても有名な身体の一部を鍛える体操。
先輩さんは目を反らすと、何も持っていないのに品出しに戻りました。
後輩ちゃんはレジの中で崩れ落ちました。
その後、二人は何もなかったように仕事に集中しました。
・先輩さんと後輩ちゃんとシュリンカー
先輩さんはコミックをビニールの袋に入れながら、後輩ちゃんに何か説明していました。
「こうやって袋に入れて、シュリンカーに通すと、ほら」
袋に入れられたコミックを何やら機械に入れました。本はコンベアで運ばれ、機械の中を通って出てきました。
すると袋は熱で閉じられ、本にフィットしました。
本屋さんのコミックを包んでいる透明なフィルムでした。シュリンクというようです。
「おぉ、凄いですね。私てっきりこの状態で本屋さんに送られてくるのかと思ってました」
「うん、一部の出版社からは包まれた状態で来るんだけど、基本的にはお店の方でやってるんだよ」
先輩さんがコミックと袋を後輩ちゃんに渡しました。
「じゃあ、やってみて」
後輩ちゃんは、はいと返事をすると見よう見真似でコミックを袋に入れました。袋に入れるだけですから苦労はありません。
そして恐る恐る機械――シュリンカーと言います――に通しました。
コミックは先輩さんが通した時と同じように機械の中を通り、ピッチリと包まれました。
「おぉー、出来ました」
「うん、出来たね。後は他のコミックもどんどんシュリンクしていこうね」
「はいっ」
後輩ちゃんはサクサクとまでは行きませんが、コミックを袋に入れていき、シュリンカーに通していきます。
「熱いから気を付けてね」
「はい、分かり――あつっ」
シュリンカーは大変熱くなっているので気を付けましょう。
「大丈夫、後輩ちゃん。見せて」
先輩さんが後輩ちゃんの手を取り、シュリンカーに触れたであろう箇所をまじまじと見ました。
「あ、あぅ」
「どんどん手が熱くなっていくよ。大丈夫? 火傷した? 痛くない?」
「いえ、あの、そうではなくて」
後輩ちゃんの顔が赤くなっていますが、先輩さんは気が付きません。
そこへ毒舌さんが通りがかりました。そして二人をチラッと見ると、
「チッ。爆ぜればいいのに」
そう呟いて、立ち去っていきました。
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