Please tell me
喘息患者
この世界はこうして始まった。
第1話 頭おかしい奴の死に方。
薄暗いじめじめした部屋。午後三時。
部屋の中心部に就寝用のベッドが一つと、その他ガラクタが散らばっている汚い部屋。
その部屋の中で、ガラクタ同士をつなぐ配線をこまごまと確認している人間が一人。
「…よし、後は三分待つだけだ。」
男は、就寝用のベッドに横たわった。そして、自分の首に丁度良く当たるように、半円にくりぬかれた木の板に、両サイドの手首用の穴にも手を通して、反対向きに同じような板を上から重ねた。
そしてその上には、薄暗い光の中でもギラギラと鈍く輝く鋭い刃。すなわちギロチンが今か今かと待ちわびていた。
それだけではない。ギロチンを繋ぐ鉄棒には無数の鉄線が巻き付けられており、その先には高電圧装置がタイマーをカチカチカチと愉快に鳴らしている。
また、男の頭頂部目がけて銃口を突きつけているライフル銃が、時限式トリガーの合図を今か今かと待っている。
「あ、いっけね忘れてた。」
男は板から抜け出ると、ギロチンの手前に準備しておいた液体カプセル二錠を拾い、それを口に含んで水で流し込む。
錠剤の中身はトリカブト。とっても優しい闇の団体が、欲しいと言ったら売ってくれた。効き目が早いので、男は急いでギロチンに戻る。
「よし。」
ギロチンに身動きが取れないようにされた男は、人生最大の興奮に包まれていた。
ああ、ようやく死ねる。何度も何度も惨めな思いをして、ようやく幸せみたいなものをつかみ取ったけど、その先に欲しい物は無かった。もう後は死んだらどうなるかぐらいしか楽しみがない。でもどうせ死ぬなら誰よりも残酷に死のうと思って、今日まで必死に金を稼いで準備してきた。
興奮に心拍を加速させていると、用意していたピタゴラスイッチが硫酸の入ったバケツを男に向かってひっくり返す。体中が焼けつくようだが、今はそれすらも快感に等しい。
そして、その愉悦に浸るその直後だった。
銃声が鳴り響き、高圧の電流が体中に流れ、視界がガタガタと揺れ、ギロチンが真っ逆さまに落下し―、
-最後に大きな爆発音が世界に轟き、男の部屋は黒焦げになった。
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