竜人族の里で遊ぼう

魔法使いで引きこもり?15巻発売記念SS


第一部の最後となる15巻が9月末に発売となりました

応援してくださる皆様のおかげです!心より感謝申し上げます🙏




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 シウがお話をしている間、フェレスたちは近くの草むらで遊んでいた。

 アウレアも一緒だ。シウに「アウルだけじゃなく、クロとブランカの面倒も見てね」と頼まれ、フェレスは胸を張って「まかせて」と答えた。

 小さい子たちは動き回る。特にブランカはひどい。お守りは大変だ。けれど、最近はクロが鳴いて呼んでくれるので助かっている。アウレアが危ない時もだ。

「きゅぃ!」

「にゃにゃ」

 慌てて駆け寄ると、アウレアが低木の上に寄りかかっていた。もっさりしているので座れると思ったらしい。その「もっさり具合」にフェレスもうずうずしてしまう。でも、今はダメだ。アウレアが転びそうになっている。

 シウが「アウルはなるべく体を地面に接しない方がいいんだ」と言った。だから専用の靴を作って渡したのだそう。よく分からないけれど、シウがすごいのだから靴もきっとすごいのだろうとフェレスは思った。

 とにかく、アウレアを転ばないようにしなくてはならない。

「にゃにゃにゃにゃ」

「ふぇれ、ありがとぉ。あのね、くさの、ベッド!」

「にゃっ」

「きゅぃ」

 もっさりした葉っぱを撫でるアウレアを見て、フェレスはやっぱり体がうずうずした。クロが慌てて鳴く。フェレスは「わかってる」と頷いた。体の大きなフェレスが草のベッドに乗ったら潰れてしまう。たぶん、そう。

「にゃ……」

 想像して尻尾が下がる。すると、アウレアとクロが慰めてくれた。アウレアは手で撫でてくれ、クロは背中に乗ってポンポンと飛び跳ねる。

「にゃ!」

 元気になった。フェレスは尻尾でアウレアとクロにお礼した。ふさふさの尻尾に触れた一人と一頭はキャッキャと喜んだ。


 その間、ブランカは自由に走り回っていた。もちろんフェレスは目の端で捉えている。ブランカは危険だ。どこにでも突っ込む。

 はたして、フェレスたちが和んでいる間にブランカは別の低木に突撃していた。ちょっとした隙間を見付けて潜り込めると思ったらしい。けれど枝に邪魔をされて止まった。

「みぎゃ!」

「にゃふぅ……」

「きゅぃ」

「おしり~」

 アウレアがブランカを見て笑う。お尻だけが飛び出て頭は低木の下だ。ブランカは前にも後ろにも進めずに足掻いた。それが、アウレアには遊んでいるように見えたのだ。

 ブランカの尻尾は地面を撫でて土埃で汚れた。フェレスは「あーあ」と思った。いっぱい汚して、ダメだな~とも思う。

 でもブランカはまだ幼い。赤ちゃん――ではないけれど、それに近いのだから仕方ない。シウも注意はしても怒らないから、フェレスも「あーあ」と思うだけだ。

「み゛ぃ~」

「にゃにゃにゃ」

 泣きそうな声になってきたので、フェレスは手前の枝を前脚で薙ぎ払った。それからブランカの首を噛んで助け出す。

「みぎゃ!」

 ありがとうというニュアンスの鳴き声が飛び出るものの、ブランカはすぐに別の低木へと突撃した。クロが「きゅ……?」と驚く。さっき困っていたのに反省してない、と考えたのだろう。フェレスも不思議だ。その時、アウレアが笑った。

「ベッドのした、たのちいね!」

 フェレスは「それだ」と思った。フェレスも小さい頃はベッドの下に潜り込むのが好きだった。体が大きくなってからは入れなくなったけれど、今でも時々狭い場所に入りたくなる。

「にゃ~」

「きゅぃ?」

 フェレスが「分かる~」と言えば、クロが首を傾げる。

「にゃにゃにゃにゃにゃ?」

 クロもシウの手に包まれるのが好きなはず。フェレスが聞くと、クロは「きゅぃ!」と嬉しそうに鳴いた。あれと同じ、狭い場所だ。しかも大好きなシウに包まれるのだから、尚良い。

 今のフェレスには無理だから、少しだけ羨ましい。

「にゃぅ……」

 フェレスは頭を振った。そうだ、もっと楽しい遊びを考えよう。


 最初は綺麗な石を探す遊びだった。そのうち、草むらから飛び出す虫を捕まえようと躍起になった。やがて、蛇の抜け殻を見付けた。大きな石が邪魔で転がす。

 石の下には虫がいっぱいだ。ブランカが目を輝かせて喜ぶ。アウレアもだ。屈んで拾おうと頑張る。クロはミミズをジッと見つめていた。

「にゃにゃ~」

 すっかり夢中になって遊んでいると、話を終えたシウがやってくる。

 フェレスは真っ先に駆け寄った。遊ぶのも楽しいけれど一番はシウといること。

 そう、シウと遊べる方が絶対に良い。

 フェレスは「宝物がいっぱいある」と教えてあげた。早く早くとシウを急かす。

 ところが、振り返ってみればブランカが穴に落ちている。アウレアも転びそうだ。クロが必死になって止めていた。フェレスは慌てて飛んだ。

 ギリギリのところでアウレアを体で支え、ブランカを咥えて助ける。

 お守りを頑張ったところがシウに見せられたのではないだろうか。ついでに親分の威厳を見せる。その場で、危ない真似をしてはいけないとブランカに注意した。

「にゃ!」

 どうかなとシウを見れば、笑顔だった。フェレスがすごく頑張ったのを、偉いと思っているのだろう。フェレスは胸を張ってシウの前に立った。


 ――撫でられ待ちのフェレスを前に、シウは困ったような顔でそっと手を伸ばした。






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第二部の1巻が10月末に刊行予定です(連続刊行!)

まほひきに引き続き、まほゆかもどうぞよろしくお願い申し上げます🙇



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