文 あやかし
ホテルの資料をコピーさせてもらい、僕はタクシーで地元の警察署へ向かった。
『
調書室で待つこと40分、いかにも所轄のうだつのあがらないといった風貌の刑事がノックもせずに入ってきた。
「本庁の…鑑識さんが何か?」
「あぁ…急にすいません、このバタフライナイフに見覚えありませんか?」
いきなり、『
刑事は、しばらく写真を眺めて、僕の顔を見た
「これがなにか…」
僕は確信した、この刑事は、このバタフライナイフを知っている。
そして『
「いえ…ハンドメイドのようなんですが、製作者を知りたくて」
「……昔ね…傷害で使用されたナイフだよ…おそらくだが…この木目調のナイフは覚えてる」
「傷害事件ですか?」
「ん…まぁ大した事件じゃなかったんだ…被害者も軽傷だったしね」
「その記録は?」
「無いよ…」
「無いって…どういうことですか?」
「全部、公安が回収しちまったんだ」
「公安が…」
「それ以上は聞くな…それ以上は知らないしな…聞かれても…」
そう言うと、刑事は立ち上がって、部屋を出て行った。
僕は、警察署を出て、喫茶店まで送ってもらった。
待ち合わせの時間までは、まだ随分と間がある、駅の周辺をブラブラと歩く。
このバタフライナイフが過去の傷害事件に使用されていた…。
それが持ち込まれたのか…今頃になって?
依頼元は公安なのか…。
まさかな…公安が取り扱う様な
駅前の公園で写真を見ながらヒマを持て余していると、老人が声を掛けてきた。
「アンタ…東京の人?」
「えぇ…」
「なんにもない所だろ…団子食う?」
「あっ…いただきます」
「昔はね…温泉街で、活気もあったんだ…ヤクザもいたけどね…」
「はぁ…ソコに定食屋あるだろ、アソコは昔、ヒドイ目にあってね~」
老人の話だと、そこの定食屋はヤクザに多額の借金があったらしい、ヒドイ取り立てにあっていたそうだ。
「そのナイフ見てたら思い出してね~警察の人かい?」
「えぇ…まぁ…見覚えがあるんですか?」
老人は、しわだらけの頬を引っ張って、僕の目の前まで顔を突き出し傷を見せてきた。
「刺されたんじゃよ…そんなナイフでな…それで声を掛けたんだ」
「そうなんですか…あっ、刺したのは中国人ですか?」
「いや…日本人だ、若い…本名は知らないが『タカ』と呼ばれていたよ」
「違うんですか…『タカ』…」
「あぁ…割と当時は有名な男だったからね」
「なぜ刺されたんですか?」
「あぁ、あの店は今は息子夫婦がやってるが、もともとはワシがやってたんだ…それでね、当時は警察にも届けられなかったからね…」
「そういうことでしたか…その『タカ』って男は、その後…」
「いや…知らないな…まともな生活をしているとは思えないがね…」
「このナイフですか?本当に?」
「あぁ…この細いナイフだ、柄も一緒だ、よく振り回してたからね、よく覚えているよ」
「そうですか…」
「うん…つまらん話聞かせたね…あの男を調べてるなら気を付けなさい…アレは人じゃない」
そう言い残して、老人は食堂へ帰って行った。
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