芳しき疑惑
妖 あやかし
『バタフライナイフ』が、ここに持ち込まれた。
それ自体は珍しくは無い。
ただ、この『バタフライナイフ』は何らかの犯罪に使われたものではないということ。
そういう品が持ち込まれるのは珍しいというだけだ。
「コレの何を調べればいいのですか?」
「ん…経緯を知りたいのだ、製造から…」
「製造からですか?」
「あぁ…どこで誰が作ったかというとこまででいい」
「見たところハンドメイドのようですが…詳しくはないのですけどね」
「あぁ、カタチも変わっているしな」
「そうですね…バタフライナイフにしては、いやに細身です」
「趣味的に作ったのだろうな…まぁ…頼むよ、1ヵ月後に報告を聞かせてくれ、あぁ、それとキミは、その仕事だけに集中してくれて構わない、話はついているからね」
「解りました…」
僕はバタフライナイフを開いてみた。
多少のガタがきている、使い込まれてもいるようだ。
刃は入っていない…というか潰してある。
ナイフアクションの練習用なのか…。
これで人殺しは難しい。
公安が持ち込んだのだ、普通の押収品ではないだろう。
詮索はしない、それが長生きの秘訣だ。
ネットで、類似のナイフを当たってみる。
『バタフライナイフ』 『細い』 『ハンドメイド』
まぁ…こんなんでHITするとは思えないし、期待もしていなかったが、まぁ思っていた以上に検索結果は的外れだった。
このような形状、細身のバタフライナイフというのは意外と無いようだ。
薄いというものはあるようだが、細いという表現での検索の仕方が悪いのだろうか。
ハンドメイドでナイフを造っているところ当たるというのが早そうだと思い、検索した。
ネットとは便利なようで…仕事の幅を増やしてくれる。
これは、はばを広げただけで、絞る要素が無い。
僕は、しばらく考えて、探すことを諦めて、探してもらうことにした。
警察という身分は明かせないので、漫画喫茶で専用のサイトを作ってコレクターからのアクセスを待つことにした。
何日かしてサイトに書き込みがあった。
『それと同じデザインのナイフを1本所持しています』
添付画像つきのメールだった。
すぐにファイルを開いて確認すると、間違いない。
グリップが木目調のデザイン、画像のバタフライナイフは赤いチタンのようだ。
「それをどこで手に入れたのですか?」
返信すると、すぐに返ってきた。
『日本へ行ったときに、お土産に購入しました』
ロシア人のようだ。
船乗りで、日本へ行った際に購入したらしい。
購入したのはN県N市 駅前にある古美術商。
3本セットで売られていたが、持ち合わせがなく1本を頼み込んで売ってもらったとのことで、よく覚えていたようだ。
僕は、個人的に、このバタフライナイフを気に入っていた。
扱いにくい長さだが、細いシルエットは美しいと思う。
僕は早速、電話でアポイントを取って、古美術商の主に3日後、会いに行くことにした。
もちろん警察とは名乗ってはいない。
このバタフライナイフを持って行ければいいのだが、さすがに、押収品を持ち歩くわけにはいかない。
何枚かの画像をプリントアウトして、僕はN県N市に向かった。
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