スカイ・ハイ

第11話 無限と可能性

 陰口しか叩けない小心者。

 こういう人間は、周りを巻き込んで小さな悪意あるコミュニティを創る。

 1人じゃ何もできないくせに集団になると、別の誰かを独りに追い込んでいく。

 会社に長く居座っている無能な男…。

 どこの会社にも居る、老害候補の有力株ってところだろう。


 このレポートによると、いや…客観的に見ても…写真を見ただけでも、仕事が出来る顔ではない。

 内面の醜さが、歪みとなって顔に出ている。

(呪いでもかけられたような顔だ…)

 殺しに感情は要らない…だが殺しやすい顔と、殺しにくい顔があるのは事実だ。

 弾き鉄ひきがねを弾きやすい顔。

 それは、俺にとってありがたいことではある。


 そんな顔に産んだ両親を恨むといい…いや…そんな顔になったのは、きっとお前の性格だよ。

 その顔で…その性格…だから殺されるんだよ…『カセ・コウジロウ』


 まぁ…後、数週間の命だ…せいぜい恨まれながら過ごすといい。


「片山さん…相談があるんだけど…」

 会社の先輩、と言っても歳は私より20歳以上も下、息子でも、おかしくないほど離れている。

「なんでしょう」

「あの…会社辞めるって聞きました…それで…その…退職って、どうやって…あの手続きというか…辞表というか…」

「辞めるのかい?」

「いや…でも、俺、必要とされてない気がして…」

「なんで、そう思うの?」

「なんとなく…やりがいもないし、俺の仕事なんて誰でも出来るような簡単な仕事だし、馬鹿にされてるようで…」

「誰にも出来ない仕事なんて無いよ。同じように誰でも出来る仕事もないさ、辞めるなとは言わないけど、今じゃないんじゃないかな」

「えっ…」

「ん…ボーナス貰ってから、ゆっくり考えたらどうだい?」

「片山さんは…なんで、今辞めるんですか?それこそ、ボーナス貰ってからでも」

「私はね…もう歳だしね…転職するにも時間が無いんだよ」

「でも…」

「キミは、いつでも辞めれるよ、だから考える時間はある、確かに長く居ても良いことは無さそうだけど…貰えるモノ貰ってからでも遅くは無い」

「片山さんは、上に嫌われてるって…聴いたけど悔しくないんですか?」

「ん~悔しいとは思わない、けど…まぁ疎まれてるのは薄々知ってたからね…長居してもね」

「大手の出身だからって、怖がられているんだって皆、言ってます、ほらウチ小さい会社だから…レベルが違うっていうか…だから怖くて管理職に就けられないんだって」

「そんなこと…ないと思うよ…買いかぶりだよ、私は、そんな大した人間じゃないさ」



 そう…大した人間じゃない…。

 自惚れが強くて、傲慢で、他人を見下すだけの、くだらない人間。

 キミが私をどう思っていようが…依頼があれば、俺はキミの眉間に銃口を向ける。


 そう…平等なのだ。

 誰であろうと…俺の前では。

 それが無垢な赤子でも…政治家でも…警官でもヤクザでも…きっと神でも…。


「大丈夫だよ…キミは若い。可能性はもっているんだから、ゆっくりと違う路を探る時間はある。私とは違うんだ…経験しか持っていない私とは、もう可能性なんて無いのだから私にはね」

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