第4話 スパイス

 それは赤々とした唐辛子だった。


 御袋が枝ごと収穫した唐辛子を届けてくれたのは夏も終わる頃。暦の上では秋だが、まだ残暑が厳しい時だった。

 枝には緑や赤の唐辛子が沢山生っていた、唐辛子がこんな風に栽培、収穫されるモノなんだと初めて知った。

 このまま乾燥させれば乾燥唐辛子の出来上がり、なんてお手軽な。


 俺は早速、生唐辛子を使った本物?のエマダツィを作り始めた。材料の唐辛子は大量にある、ならばココはアレを試すべきだろう。

 これまでの調理で一度に使った乾燥唐辛子は最高で20本、だが言わるほどの「辛さ」を味わったコトはまだ無い。

 唐辛子のチーズ煮と言う料理だ、玉ねぎが旨くても仕方がない。やはり一度は唐辛子を味わうために辛さと旨さの境界に挑戦する必要がある、一人前に一気に倍の40本の投入を決断した。


 もう何度も繰り返した手順で調理していく、すっかり手慣れたな~俺。

 ま~この料理で難しいのは玉ねぎのスライスとチーズを焦がさない火加減、全くシンプル・イズ・ベストにもほどがある、だらかこその国民食か~。


 カットした生唐辛子20本と玉ねぎにチーズ、調味料を入れて10分鍋で煮る。チーズが弱火でトロリと溶け来た!さ~行くぞ残りの20本。ゆけ、レッドデビル共!う~ん流石に鍋の中が赤々としてるぜ、蓋をしてさらに5分煮込む。


 待ってる間、俺はとある料理バトルアニメのED曲を鼻歌交じりに口ずさんでいた。

 少し切ない、そして暖かな歌詞とメロディー、女性ヴォーカルの声が頭に響く。料理すると歌いたくなる歌がいくつかある、歌うと味が良くなるなんて話もあったよな、そういえば最初が唐辛子だったけ?


 さあ、出来上がりだ。


 その名を知った時から約5ヶ月、乾燥唐辛子で代用しながら調理を繰り返し、やっと手に入った生唐辛子で作った「エマダツィ」しかも唐辛子倍Ver.さすがに見た目に赤が多い!!


 (-人-)


 いただきま~す。


 、、、か、辛ぁ~~~~


 ハハハハ。こ、これは口から火が出そうだ


 「生」がと言うよりは、やはり「量」がモノを言ってる、まいった。


 さすがに一人前に40本は入れ過ぎみたいだ、だが味は良い、辛くても旨いぞ。 

 ブータンとじゃ~唐辛子もチーズも種類が違うだろうから比べること自体が間違いだろう、でもこれならきっと彼女に喜んでもらえる。


 俺はスマホを取り出して連絡を取りながら、5本ぐらい減らしたほうが良いなと思った。

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