第2話 学園のアイドル

 ‘ジリリリリリリリ‘


 朝の7時になり、セットしておいた目覚まし時計がうるさく鳴り出す。


「うっさいな。」


 と本来の仕事を果たしているはずの時計にイライラしながら叩き止めて、なかなかベットから出てこない少年。


「ほら、拓真たくま!早く起きてきなさい!」


 母親の声でしょうがないといった感じで、ベットから出てくる拓真。リビングに行き朝ごはんを5分ほどで食べ終え、学校に行く準備をする。そして、7時30分。


「よし、忘れ物もなし。それじゃ、いってきまーす。」


 そういって学校に行く拓真。


 拓真が行く高校までは歩きで10分ほどで、まだ時間に余裕があるにも関わらず拓真はグングンと進んでいく。


 そして7時36分に学校に着くとすぐにスマホを取り出し、いじりだす。


「また拓真の奴、スマホいじってる。」

「しかも何かニヤニヤしてるし、キモッ!」


 いつも一人でスマホをいじっている暗いやつと思われている拓真。

 そんな拓真がスマホをみてニヤニヤしていれば嫌なことも言われる。


 そもそも拓真はニコニコしているつもりなのだが、他の人からはニヤニヤしているように見られているだけなのだ。

 そしてなぜ拓真がニヤニヤしているのかというと、


[いつも見てます。頑張ってください。]

[ゾンビ相手にもドSなクマ氏ww]


 等といったコメントだった。というのも昨日生配信していた動画をそのままyourtubeにアップしていたので、それを見た視聴者がコメントを書いてくれたのだ。


 ちなみにハンドルネームは黒クマ。‘拓真‘→‘たくま‘のくまの部分をとり、さらに自分がSであるのは自覚しているので黒いということで合わせて黒クマ。

 この拓真が運営する黒クマチャンネルのチャンネル登録者はつい最近50万人を突破した、近頃波に乗っている配信者だ。


 たまに顔を画面に出して配信しているが、マスクをして口元を隠し、さらに髪型もいじっていて、学校にいる姿からは誰も想像がつかない。


「おはよう、拓真君」


 と突然話しかけられたが拓真も


「おはよう…」


 と返事をする。


「くっそ、学年のアイドルの紗季さんが話しかけてもあの態度…」


「話しかけてもらっているありがたさを知れ!」


 というふうにまた罵られる。


 うるさいなと思いながらも無視を決め込む拓真。拓真がさらに陰口を言われる原因となった紗季はというと、席で女友達と楽しそうに話している。その件の紗季が妙に興奮したように話している。何の話をしているのか気になり耳を立てると、


「昨日の配信見た?最高だったよ~。最後の家でゾンビが出てきたときもゾンビ相手にも罵って倒してて…今回から新しいゲームはじめてたけど前の動画の‘ゾンビハザード‘の時みたいでおもしろかった~。」


 え?昨日の配信?ゾンビ?昨日俺が配信した動画っぽいけど…。いや、最近発売されたゲームだからいろんな実況者が実況している。俺とは別の実況者だろう…。でも俺が一番最初に投稿した動画のシリーズが‘ゾンビハザード‘だった。

 いや、だけどただの偶然だろう。と頭を悩ましていると、


「私もゾンビみたいに黒クマ様に罵られたい~」


 との爆弾発言が紗季のうちから発せられた。


 学年のアイドルは俺こと黒クマのファンだった。

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ドSゲーマーと踊り姫 ニスタケ @kentyan

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