第2話 お願いです
こんなことがあるでしょうか。
僕ではお嬢さんもお母さんも笑顔に
してあげることが出来ないのです。
きっとこの小さな女の子は
ずっとお顔を曇らせて
お母さんの待つあたたかいお家へ
この畦道をトボトボ下を向きながら
帰らなければならないのです。
いいえ、それでいいはずがありません。
僕は知っています。
お日さまの光がなければ
笑顔で上を向くことは出来ないのです。
僕は考えます。
僕に何が出来るのか。
しかしその時です。
少女は意を決した様子で言いました。
「お願いがあるの。」
いったい僕に何が出来るのか。
前のめりになり言葉を待ちます。
「ママに謝りたいの。」
目を逸らさずに見つめます。
「お願いポプラさん、私に勇気を
ちょうだい。」
お嬢さんは僕に手をかざし、そっと目を閉じました。
しばらくして、お嬢さんはかざした手を戻し、静かに目を開けました。
そのお顔はとても強い力に溢れています。
まるでお日さまの光をこれでもかといっぱいに吸い込んだように。
「ありがとうポプラさん。」
見ている僕の方が嬉しくなる笑顔でした。
お嬢さんはクルッと振り返り
「また来るわ、じゃあね。」
そう言ってあの煙突お屋根の
お母さんの待つあたたかいお家へと
手を振りながら帰っていきました。
そして、それを僕はずっと見ていました。
枝をユサユサ揺らして、少女に勇気を。
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