第4話 奈々子ちゃんの行方
「ど、どこですか!?」
お母さんが、インド人の店員に詰め寄った。
「厨房ダヨ!」
えっ、何で厨房?と思いつつ、三人で店内奥に移動する。
そこにいたのは。
「彼女、今日カラ、バイト入タネ!可愛イシ、仕事オボエル早イシ、ソシテ、ワタシノ初恋ノ子、ソクリネ!!」
「……」
厨房にいたのは、大きなカレー鍋を一生懸命かき混ぜる女子高生と思われるバイトの女の子だった。
「違います!この女の子です!」
私は、奈々子ちゃんのお母さんのスマホをインド人の店員に見せる。
「ソンナ怒ルト、男前ダイナシネ」という、さらに怒らせるような一言を私に浴びせた後、店員は、スマホの画面を確認した。
「ウ~ン……コノ子ハ見テナイネ。初恋ノ子ニモ似テナイシ……」
アンタの初恋関係ないわと突っ込むと、本宮君が言う。
「ここには来てないみたいですね。他を探しましょう」
「……はい」
お母さんは少しうなだれ、頷いた。
「アッ、明日ノオススメメニューハ、ヒヨコ豆ノ……!」
バタンッ。
私達は「ナマステ」を後にした。
「よく行くカレー店といえば、この2店舗しか思い浮かびません……」
うつ向くお母さんに、本宮君が聞く。
「カレーを食べに行く、という言葉に、他に思い当たる場所はありませんか?奈々子ちゃんが食べたいと思うようなカレーのある場所は?」
しばらく、お母さんは考えた後、ぽつりと答えた。
「奈々子は……私の作るカレーが好きです」
お母さんの?
「私の作るカレーは、ちょっとだけ変わってるんです。野菜が苦手な奈々子でも食べられるように、ニンジンをすりおろして入れるんです」
「へぇ~そんな作り方あるんですね!」
「はい……。それから、玉ねぎは、まずみじん切りにして先に炒め、そこに水を加えてカレーを作っていくんです。そうすると、ニンジンも玉ねぎも出来上がる時にはルーに溶けて分からないし、ルーの自然なとろみにもなって、美味しいんです」
それは、確かに美味しそうだ。
「でも……私のカレーを食べたいのなら、家で待っているはず。だから、奈々子の食べたいカレーは、私の作ったカレーじゃないですよね……」
お母さんは、どこか寂しげに呟く。
でも、少しの間考えるような表情を浮かべた後、本宮君が言った。
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