第35話 まるで新婚さん?

 数日前のことである。

 クッションに背中を預け、スマホを片手に家で寛ぐ私のお腹には姪の後頭部があった。

 二人仲良くリラックスしていた訳だが姪が何をしていたかといえば、一方的に話しかけていた。

 私はもちろん無視することなくちゃんと聞いて相づちを打って返事をしていた。

 しかし、姪にはそう思えなかったらしい。


 「ねぇ、ちゃんと聞いてるの?姪ちゃん(仮)はちゃんとととちゃん(仮の私の呼び名)の話を聞くのにととちゃんは姪ちゃんの話を聞かないの?」


 まさかのどこかの新妻のような台詞。そんなことを言われれば私もどこかの旦那さんのようにソロリソロリとスマホを置く以外の選択肢がないではないか!?


 3歳4ヶ月にもなるとこんなこともいうのかぁ今度から気を付けようと思う体験だった。


 それから数分後。

 姪は顔を近づけて頬っぺたにちゅ~をしてきた。ーーーーいや、訂正しよう。

 ちゅ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~をしてきた。最後には音までたて凄く熱烈だった。


 結果、頬っぺたには涎がついた。

 姪にとっては最上の愛情表現なのでされている最中は「ありがとう」と何度もいったのだが、唾は勘弁してほしい。切実に。ーーーーなので指摘してみた。


 「ほら、見て!頬っぺたに姪ちゃんの涎ついてるよ」


 そう言うと姪は近くにあったティシュをとり..................自分の口を拭いた。

 ............。私は差し出しいていた手をソッと下ろした。


 今日の私はドライアイの心配をしなくてもいいのかもしれないーーーーと、ポジティブに考えることにした。

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