第33話 私、案内します

 数年前の話である。

 仕事終わりの帰り道、年配の女性から声をかけられた。スマホ片手に「この近くだと思うのだけど、このお店知らないかしら?相手が待ってるのよ」と言われた。

 帰り道ではあってもそこら辺のお店に行ったことはなく聞いたこともなかったので「わからないです」と答え私はバス停へと向かった。


 バス停の正面には外国の造りのような建築物がある。一階はL字に通り抜け可能で、中央と入り口には螺旋階段がある造りの建物。そこには数点のお店が入っていた。

 ふと案内板を見ると先程見たお店の名前があった。

 私は急ぎ先程の場所に戻り女性を連れてきてお店に案内した。

 中に入ったのを見送った後、丁度バスが来た。


 バスに乗り、揺れる体。

 そこで私は思い返し自分の失敗に気づいてしまった。

 同じ建物にある別のお店に案内してしまったということをーーーー。


 善意からしたつもりがとんだ赤っ恥をかかせてしまったことだろう。

 この場を借りて謝罪したい。あの時はすみませんでした。

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