第1話 姉

 一般的に長女といえば『しっかり者』というイメージが強いと思う。もちろん姉がしっかりしていないということをいいたいのではない。ただ我が家では姉の行動全ては「お姉さまだから」で皆、納得する。

 どういう意味かというと…………姉が小学生の頃、家庭訪問で先生がいらっしゃった際に母に尋ねた。


 「お宅のお子さんスイカ嫌いですか?給食に出てくるスイカ、クラスの他の子たちはおいしそうに食べるんですけど、いつも手をつけずに残すんです」


 「家では普通にスイカを食べるんですが……何故ですかねぇ」


 母が横にいる娘に尋ねると一言。


 「汚れるから」


 先生は言葉が出ず、母は納得した。


 「あぁ!家では種を取って賽の目に切ってからフォークを添えて出すんですよ」


 先生は唖然としていた。


 先に言っておくと家はお金持ちという訳ではないし召使がいる訳でもない。ただ、姉は父・長男の一番最初の子だった為に共に暮らしていた祖母、曾祖母に可愛がられ至れり尽くせりの幼少期を過ごした。つまりは祖母、曾祖母が召使いのように世話を焼いていたといっても過言ではないだろう。

 その結果、給食に出てくるスイカは食べないし同じ理由でミカンも手を付けなかっただけの話である。

 ちなみに私は姉のスイカが準備されている横で八等分に切られた皮の付いた状態の物を食べていた。

 動かないのは当たり前。それが姉である。

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