ねむいけどチビに威圧されます。
「そういえば言い忘れたんだけど、僕も聖魔祭にエントリーするつもりなんだけど」
「は?」
今悠太たちは聖魔祭にエントリーする選手の為の説明会の一室に向かっていたところ、突然美桜が隣で手を後ろに回しながら、満面な笑みでそう告げてきた。その笑みは心から笑っているのではなく意思を変えるつもりはないといった風に見えた。だがわざわざエントリーするなんて正直何を考えているのかわからない。
「どういうつもりなんだよ」
「別にいいじゃん出たって、エントリーは自由なんだし。それに....一緒に....その....屋台も....見回れるし....」
「えっ?なんだって?最後らへん小さすぎて聞こえんぞ」
「死ね」
「あべしっ!」
悠太は美桜の強烈なビンタをもろにくらう。しかし突然のビンタをくらっても本人はケロッとしており、悠太は逆の意味で今のビンタに驚いていた。
「思ったより痛いな」
「ほんとになんなの?僕の本気のビンタをくらっておいてその余裕そうな反応は!」
「さっきからお前の言っている意味がわかんねぇよ」
そして、ビンタされた頬を撫でながら歩く悠太とさっきから一言も喋らない美桜と歩くこと約五分、ついに目的地の場所に着く。そこにはすでに数百人以上の聖魔祭にエントリーをする生徒が集まっていた。
(どいつもこいつも出るだけあってなかなか強そうだが.....ん?)
悠太は不意に誰かの視線を感じる。そしてその視線の先を辿ると深くフードを被ったいかにも怪しい生徒がこちらの方向に身体を向けていた。
(なんだあいつ?見たことはないが、どこか
「ふっ、」
その女か男かわからない生徒は一瞬潮笑うように微笑みを浮かべるとすぐに人混みの中に消え去っていった。去る寸前悠太に向けて不気味な笑みをしていたように見えたがきっと気のせいだろうと悠太は思い込む。
「ねぇ、悠太?ねぇ、悠太ってば!!」
「ぉ、うん?なに?」
「もぅ、どうしたの?」
「いや、なんでもない。」
「そう、それならいいけど。」
悠太はこの時嫌な予感がした。あの生徒もだが、何故かこれから開催される聖魔祭に。
それから数分経ち、未だ始まらない説明会にだんだんまだかまだかとソワソワしだした生徒たちの態度をぶち壊すかのように次の瞬間人間の声とは思えないほどの激音がこの場全体に響き渡る。
「よーっし!!!みんな始めるぞー!!!!これからこの学園のアイドル(自称)である『
そこから現れたのは、黒いロングヘアの身長百四十センチ程しかない着物を着た小柄な
「もしもーし、誰かなー今私を心の中で《チビ》だと思ったオ・バ・カさんは〜、殺すぞ」
「「「「「!?!?!?」」」」」
先ほどまでの口調が嘘かのように、ドス黒く低い声で生徒全員に威圧する。その場にいた
「おっ私の殺気に全く動じない者が
そう寧々先生が手に持った扇子を眉の場所まで上げ、見渡すように「へぇ〜」と感心しながら怖じけず立っていた生徒たちを観察する。
その生徒たちとは、美桜、そしてフードを被った生徒と女子生徒であった。美桜は「えっ?」と首をかしげる。だがそれは至極当然な反応だろう。自身よりも強いはずの悠太が座っているのだ、だがその疑問はすぐに解消される。
悠太の性格は面倒くさがりで常に寝ることしか考えてない怠惰な人間、つまり寧々に目をつけられることをめんどくさいと思った悠太は威圧にやられた演技をしたと言うわけだ。それは単純と言うかバカというかとりあえずやっぱり悠太だなと美桜は心の中で思った。
(だけど寧々先生レベルなら気づいていると思うけどな〜、現に悠太の方をめちゃくちゃ見てるし)
その言葉どうり寧々は悠太をガン見しており、ふふふっふっふ〜んと上機嫌に脚をバタつかせていた。しかしそんなことすら知らない悠太はというと、
「空気読んで急いで座っといて良かった〜」
安心しきる悠太のその言葉は誰にも聞かれることなく空気とともに溶け消えていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます