ねむいけど疲労困憊です。



五皇聖魔の一人や序列六位の美桜との模擬戦が終わり、悠太の表情は疲労で満ちていた。痩けた顔を机に伏せて手足を伸ばし、疲労困憊な様子で机に全体重を乗せていた。


「はぁー動きすぎた、もうこれ以上動けん」

「そんなことないでしょ?最後まで手加減していたくせに~」


隣に座っている美桜は苦笑い混じりにそう話すが、目は全く笑っていない。多分手加減されたことが頭にきているんだろう。


あの闘いの後、美桜は保健室のベッドで休み、意識が朦朧とする中視界に一人の少女が美桜を覗き見るようにして立っていたが、その女の子は両目を閉ざしており、両手で#刀__・__#を大事そうに抱きかかえていた。


「いけませんね美桜、私としてはとても残念です。しかし仕方がないでしょう、相手は正真正銘の化け物です。いくら人間が立ち向かってもあのお方には敵わないでしょう。そう考えればよく頑張りましたね、美桜」


その女の子は神巫のような服装をしており、小柄であった。そして先ほどまで無表情であったが言葉の最後に少しだけ優しい笑顔を見せる。その光景は身長こそ違えど母子のようであった。


「それでは私は行きますね。それとこれだけはいっておきますが、無謀な行動は慎むように。あなたの勇気ある行動力は素晴らしいですが、いきすぎるといつかその身が滅びかねませんよ。そうですね、言うなれば貴方は破滅型とでもいっておきましょう」


そしてその神巫の服装をした少女は幻かのように徐々に薄っすらと消えていく。完全に消える寸前後ろから一瞬だけ見えたその表情はどこか悲しみに溢れていた。


そして数時間後、完全に目を覚ました美桜は起きて早々驚きに包まれていた、


あの時の模擬戦、美桜は2度目の限界突破を使った時もしこの模擬戦が終わったらもう一生刀を振れないかもしれない、そう覚悟をしていた。しかし寝て起きてみれば傷や怪我の痕もなく、ベットから降りて刀を振っても全く問題がなかったのだ。そしてこの不可解な現象に悠太の仕業なのでは?と気づく。


だがいくら聞いても悠太にあの後どうなったのかを答えてはくれなかった。美桜はそれ以上問いただすことはしなかった。聞いてしまったら今の悠太との関係が壊れてしまうような気がして。そして今に至る───


「ていうか、今寝ちゃダメだよ?この後聖魔祭にエントリーする人のために聖魔祭の説明会があるんだから」

「うがぁー!!!なんでどいつもこいつも俺を寝させてくれないのー!!!」

「そんなこと言ってないでほら!さっさと行くよ!」

「勘弁してくれ...」







どこにあるかはわからないその薄暗い部屋は四人の人間以外誰もおらず、中心にある巨大な丸い机を囲うようにしてその四人の最強が集っていた。


「それじゃあ皆んな揃ったみたいだな。今回は今まで行方をくらませていた闘神殿についてだ」


ルクルドはあの戦いで悠太が闘神だと確信し、その後すぐに他の三人に収集を呼びかけたのだ。


「まて、証拠はあるのか?」


一人の男が手を顎につけ、どこか納得いかない表情をしながらそう疑問をルクルドにぶつける。だがその質問を別の少女が答える。


「クックック、儂も気になってその闘神殿の戦う所を見てみたのじゃが流石の一言に尽きるのぉ。同調もせずに第六剣術を発動し、あまつさえルクルドをお遊戯をしているかのように軽くあしらい、儂の知らない魔術も使っていた。あの小僧が闘神殿というのは確実じゃろうなぁ」


「ちっ、」


一人の少女がそう説明すると男は悪態のついた舌打ちをし、まだどこか納得のいかない顔をする。


「はい、私も#耳__・__#で確認しました。あの少年は闘神で間違いないでしょう」


その場にいたもう一人の神巫の服装をした小柄な少女が先ほどの意見に同意を示すように闘神であると断言する。


「ほんとうに闘神様なんですね~、ああ、闘神様~闘神様~、やっと見つけました~!」


そう興奮しながら呟く女性は身体をクネクネさせながら、はぁはぁと息を漏らし、頬を赤く染める。


「とにかくだ、闘神殿とおもわれる霧谷悠太は今のところヴァルシィ学園に通っている学生という身分だ。今すぐにこちら側・・・・にこさせるわけにもいかない」

「たしかにのぅ」

「だから卒業するまではあくまで学生として扱うってことでいいな?そしてその後にこちら側に引き抜く」

「私は反対です。闘神とはまさしく神の如し、私たちがどうこうするべきではないと思いますが」

「俺もその意見に賛成」


小柄な少女は先ほどと違い否定の意見を述べる。そして悪態をついていた男も便乗する。


「仕方がない、反対の意見もあるためこの議題は持ち越し、緊急議題を始める」


ルクルドは反対の意見が出始めたため、すぐに切り上げ今の議題よりも重要な話を切り出す。


「そろそろあいつが復活するそうだ」

「「「!?」」」


ルクルド以外の三人が驚きの表情をする。中には冷や汗を垂らしているものまでいた。


「確かに大きな魔力の波動を感じてはいましたがまさかそいつとは予想外です」

「そうじゃのぅ」

「そんなの闘神様が居れば余裕じゃない~」

「だったらその闘神に任せればいいんじゃないか?」


男は嬉しそうな態度をし、ルクルドを含めた他の三人は呆れたように溜息をつく。


「おぬしまだ疑ってたのか」

「あ?いいじゃないか別に、あいつを倒せばそのガキが闘神だと証明されるだろ?」

「ほんと呆れますね」

「なぁ~に~、殺されたいの~」


男に少女たちの殺気が向けられる中ルクルドはパンパンと手を叩き意識をこちらに向けさせる。


「確かに証拠といえる証拠はない、聖魔剣を見たわけではないからな、ここはお前の意見を実行しよう」


そして悠太の知らないところで悠太のめんどくさい未来が決した。

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