ねむいけど次実技です。


学園長室から退室した悠太は、学園長が言っていた交換条件をふと思い出し、その中で必ず授業中に睡眠ができるとは言われていなかったことに気づくが、聖魔祭にエントリーすることを了承していたためもうどうにもならない状況に後悔してしまう。だんだん足取りが重くなる中、嫌なタイミングでそいつは一目散に話しかけてきた。


「悠太ー?なんて怒られてきたの?」

「なんで怒られる前提なんだよ」

「えーだって悠太だし」

「どんな超絶理論だよ!」


この如何にも高嶺の花という言葉が似合うこの少女はヴァルシィ学校で一番仲良くしている女生徒『天魔 美桜てんま みお』だ。顔は整っており美形で、性格も申し分ない。学年でもトップクラスの美少女で戦闘能力も高いし、序列六位。いわゆる完璧な奴だ。そしてボクっ娘でもある。


『序列』とは、学園内の全生徒の強さの順位だ。悠太は入学してから一度も試合をしていないため圏外である。


「で?ほんとうは?」

「なんで俺が嘘ついたみたいになってんだよ。取り敢えず怒られてはいないが聖魔祭にエントリーしろってさ」

「なるほどね~、まあ悠太なら余裕でしょ?」

「そういう問題じゃねぇよ。あぁあぁ俺の極楽睡眠計画が~」

「あはは、相変わらずだね悠太は」


美桜は相変わらず寝ることで頭がいっぱいな悠太に苦笑いをするが、当の本人は全くぶれることなくどうにかして聖魔祭出場を回避できないかと必死に考えを巡らせていた。


「あっそういえば次の授業実技だね。悠太早く行こ!」

「俺はパス」

「そんな事言ってないでほらさっさと...移動を...」


強引に引っ張って連れていこうとするが悠太の体はピクリとも動かない。美桜もさすがに諦めたのか、ため息をこぼしながら説得を試みる。


「なんでいかないのかな?」

「は?何当たり前なことを聞いているんだ?そんなもん寝るからに決まっているだろ!」

「ですよねー」


こいつ何言ってんだ?といわんばかりの顔で当然とばかりにドヤ顔でちんずる。その態度に美桜は呆れを通り越し言い返す事すらめんどくさくなるが授業をくだらない理由で休ませるわけにはいかず、なんとか説得を試みる。


「じゃあさ、もし一緒に行ってくれれば次の授業先生に悠太が寝ててもいいように言ってあげようかな〜なんちゃって」


「よし!!行こう!!!!!」

「あはは、ほんと悠太って正直だよね」


悠太は肩をを交互に大きく振りながら、満面の笑みで教室から出る。そのはしゃぎはいつもの悠太とは違い、美桜はそのはしゃぎっぷりに年相応に見えた。







「おい、次実技だしやっちゃうか?」

「そうだな、いい機会だ。ここで立場ってもんをわからせてやろうぜ」

「そうだな、俺らより劣っている"劣等生"をみんなの前でボコボコにしてやろう」

「私もそれに賛成」

「私も」

「俺も」

「俺も」

「私も」

「僕も」


しかしこの計画こそが後々後悔することをまだクラスメイトたちは知らない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る