第10話 魔剣X
「刺しやがった…刺しやがった…」
藤塚は目を見開きながらうわごとのように呟いている。心臓を貫かれた勇者は砕けるように崩れた。
「なら、お前を殺すまでだ!」
「無駄だ、お前にこの剣は抜けない!!」
黒い刃を剣で払うと、返す刃で藤塚の伸ばした腕を切り落とした。
「ぎぃえぇぇぇぇぇえええ!」
人間とは思えない声をあげて藤塚が後ろに跳ぶ。この力が僕らの世界に来ることで半減していたのだと思うと悔しさがこみ上げてきた。藤塚が召還した時にかけた呪いのようなものもあるのだろうか。
「すぐに力を蓄えて貴様から剣を奪ってやるわ。」
「武器を下ろせ!」
声に気を取られた瞬間に藤塚は消えた。背後には警察の応援が来ていた。僕は忌々しい藤塚を取り逃がして苛立った口調で答えた。
「誰に言ってるんですか?逃げた『ヤツ』ですか?それとも僕ですか?」
僕は左手で印を結びながら低く唸ると自分の傷を回復した。エネルギーは剣からどんどん流れ込んでくる。
「お、お前だ!」
膝をガクガクと震わせながら拳銃を向ける警官の背後から、別の警察官と思しき人物が近寄って肩をたたいた。
「武器を下ろすのはお前だ。佐村源一郎。お前を殺人、器物損壊、公務執行妨害、銃刀法違反、その他もろもろで逮捕するつもりだから覚悟しておけ。」
他の警察官が目をむいた。
「課長!現行犯逮捕でしょう!」
課長と呼ばれた男は目を細めた。
「さっきのバケモンがウチの署の奴4人ぶっ殺した後、走ってく電車に飛び乗って逃げたの見ただろうが…外国人1人刺した未成年逮捕して、公務員4人殺した奴を野放しにしたら、法律が許してもお天道様が許さねえだろ。佐村さん。パトカー乗ってもらってもいいですかね。」
僕は頷いた。多分この課長という人は僕と同じことを考えている。僕が警察に気を取られた一瞬の隙に藤塚は電車にしがみついて逃走したらしい。パトカーに乗ると佐村の去ったであろう方向へ向かった。
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