第7話 朝の自転車置き場では

 自転車置き場に近付くと人だかりができていた。中にはちらほら他校や同じ学校の制服、見知った教師の顔もあった。


「ああ、佐村君か。」

「おはようございます。」


佐村は僕の名前だ。集まっている人だかりの内側に警察官が何人も立っていた。


「警察官が殺された?」


人だかりの声からそんな言葉が漏れ聞こえている。よくよく注意して耳を傾けると、隣県の変死事件がこの駅に飛び火したようだ。


「全身の血液を抜き取られている。例の変死体だ。」


僕は彼を見ると、彼はかなり険しい顔をしている。


「やっぱり魔術師が?」

「まちがいないでしょう。」


彼とそう言葉を交わしていると、また別方向から声をかけられた。


「佐村君だね?」


昨日会った警察官の一人だ。


「昨日はどうも。」

「もう少し昨日の続きの話を聞かせてもらいたい、署までこれますか?そっちの外国人も。」


急にきつい口調でそんなことを言われて、思わず「へ?」と声が出た。


「なんだ君は、ウチの生徒に。礼状はあるのか。」


間髪入れずにさっき声をかけられたウチの高校の教師が警察との間に割って入った。


「学校の教師か…今我々は彼と話しているんだ。」


教師も負けていなかった。


「藤塚修、化学教諭だ。これが免許証。住所もこの通り。佐村君も学生証をだせ。」

「ああ、はい。」


言われるままに学生証を見せる。


「礼状はあるのか。」


警察は黙っている。


「転ぶか?おい、転ぶのか?」


藤塚先生が警察に詰め寄る。警察官は思わぬ展開に面食らっているようだ。


「ここで無理やりウチの生徒を警察が引っ張ったら、私はきちんと学校や教育委員会に今のやり取りを報告しなければいけなくなる。警察に抗議するかどうか判断しなくちゃいけなくなる。苦情申出制度については使うべきか悩むところですが、まあ、私も警察が憎いわけではない。お分かりいただけますな?」


その警官が目を白黒させて棒立ちになっていると、後ろから様子を見ていた先輩警官らしき人物が引っ張って後ろに引っ込めた。


「ウチのモノが失礼したようで申し訳ない。後でキツく指導しておきますので。」


と歯切れの悪い物言いで引っ込んだ。

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