ついに京都……………にまだつかないってこの話誰得⁉

「なぁ恵」


「なぁに?」


「昔からずっと気になってたんだが」


「うん」


「何で俺のわがままにいつも付き合ってくれるんだ?」


「そこまで遡っちゃうんだ?私てっきり何でこの旅行に誘ったのかとか聞かれると思ったんだけど」


「まあ確かにそこもかなり気になるところではある。でもやっぱりこういうゆっくり話できるときに一番聞きたいのは、どうしてこんな冴えない俺のちょっと引いちゃうようなわがままに付き合ってくれるのかってとこなんだよ。」


「あっ、自分がしてることが、引くようなことだって自覚はあるんだね?」


「ひどっ⁉まああるからこそ聞いてるわけで」


「う~ん。特にこれといった理由は思い浮かばないな。でもこれだけは言えるってことが1つだけ、私倫也くん達の計画に嫌々参加したわけじゃないってところ。これだけは胸を張って言えるよ?」


「恵……」


「まあ、倫也くんの熱量にはちょっとどころじゃない嫌気が差してくることもあるけど。」


「その点につきましては誠に申し訳ございません‼」


「まあいいよ。でもこれで大分私も、冴えない影の薄いモブキャラなイメージを払拭できてきたかな?」


「俺が言ってきたことまだ根に持ってたのか。まあ完全に俺が悪いからなんも言えないけど。」


「ところでさ。」


「ん?」


「私のルートどうなってる?倫也くんずっと『叶巡璃』ルートのシナリオに悩んでたみたいだったから。」


「ああ、正直に言おう。まだ1割も出来てない。いや、決して恵との思い出の印象が薄すぎて書けなかったとかそういうわけじゃないからな?そこは勘違いするなよ?」


「そうなんだ。そんな風に思ってたんだね?まあ倫也くんが失礼なのは前からだから気にしてないけど。まあいいよ。そんなことだと思ったというのも理由の1つにあったからね、この旅行の。」


「そうなのか?」


「うん、まあそれだけが理由じゃないけどね。というか、それはほんの一部でメインの理由は別にあるんだけどね?」


「なにそれ⁉めっちゃ気になるんだけど⁉」


「あ~………それはじきにわかることだからいいよ。それより一応そういう目的もあるから、今のうちからシナリオのネタ作っていこうよ。」


「あれ?恵ってそんなに熱心なキャラだっけ?」


「そんなことはいいから。じゃあまずは普通の会話シーンからやってみようか。」


「う、うん。」


「とは言ってみたものの、何したらいいかよくわかんないから、普通にお話でもしようか。」


「早くもネタ作りから離れてきてるんだけど⁉」


「いちいちそういうの言わなくていいから。」


「すいません‼じゃあ普通に話すか。」


「そうだね。私、せっかく時間あるから倫也くんと詩羽先輩の出会いも、もしかしたら前も聞いたかもしれないけど知りたいな。」


「そんなこと聞いてどうすんだ?まあいいんだけど。」

「これは俺らが1年で詩羽先輩が2年だったとき、その頃発売された霞詩子先生の『恋するメトロノーム』読んでさ。めっちゃ感動したんだよ。もう何度も何度も読み返して布教してってするくらいに。まあこの時は霞先生が詩羽先輩だっていうのは全く知らなかったんだけどね。」


「それで?」


「霞先生が和合市の帖文堂書店和合市駅前店でさ、はじめてのサイン会をしててさ、俺すごい楽しみにしてて、一番乗りしたんだけど…」


「だけど?」


「さっきも言ったけどさ、その時までは俺、詩羽先輩が霞先生だってことは知らなかったし、詩羽先輩ってさ、学校では授業中もよく居眠りとかしてるのに常にテストは学年一位だしさ、まあ良くも悪くも目立ってて、まあ周りからはちょっと避けられてたじゃん?」


「そうだね。」


「だから俺もあまり関わりたくないなとか思ってたというか、まあそもそも関わることがないというか。でさ、一番に会って見たらさ、豊ヶ崎の制服着た人が座ってて、よく見たら、いやまあ普通に詩羽先輩だったんだよ。で、俺は俺で、アニメグッズ購入の資金調達のためのアルバイト許可をとるために担任にしつこく迫ったことがあって、それで結構目立ってたみたいで、詩羽先輩もその光景を見てたみたいでさ。」


「私も知ってるよ。山城先生に直談判してたんだよね?で、確か認められたんだよね?そりゃ目立つよ。」


「そうだな。というか恵も知ってたんだな。まあそれはともかくとして、詩羽先輩のほうも俺の事知ってたみたいでさ。まあ軽く意気投合して何度か小説について話す仲になったってところかな?」


「そうそう、TAKI君のファンサイトのおかげで『恋するメトロノーム』の売り上げのうちの3割を賄ってくれたからね!」


「町田さん、それは大げさですよ。というかいつから起きてたんですか?」


「なぁ恵ってところから起きたよ?」


「それって……」


「うん、茜と違って一応私は寝てるほうだから、普通に寝たふりしてた」


「何で⁉」


「いやいや、TAKIくんと加藤さんの話は面白そうだったからね。ほんとはもっと早くに話に加わろうかとも思ったんだけど、詩ちゃんの話になってたから黙って聞いてたんだ。」


「そうだったんですね。」


「うん、そうだよ。じゃあ二人で話してるところ悪いとは思うんだけど、加藤さんとTAKIくんの出会いも教えて?」


「はい、わかりました。」



この時、まだ電光掲示板は『ただいま静岡駅を通過しました』の表示が出てしばらくした頃だった。

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