第10話

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夜。

訪客を知らせるインターホンの音で、リアは目を覚ました。

ベッドサイドの端末を操作して、誰がやってきたのかを確認する。

そこにいたのは、黒い背広を着たルームスタッフだった。

いつもその日に贈られてくるプレゼントなどを届けに来てくれるのである。

『失礼いたします。お届けに参りました。』

「………。」

リアは無言でドアを開くボタンを押した。

中にはいってきたルームスタッフは、いつものようにテーブルの上に手紙やプレゼントを置いていく。

ぼんやりとその作業を見つめていたリアだったが、不意にルームスタッフがこちらを振り返ったのに微かに肩を揺らした。

彼はゆったりとした靴音を響かせながら、そっとリアのそばまで来ると、手に持っていた一通の手紙を差し出した。

それは、何の変哲もない手紙だった。

いや、ファンレターにしては素っ気なさすぎるくらいだといってもいい。

「……これは?」

「必ずお渡しして欲しいと、さる方からお願いされまして。本来このようなことは引き受けてはならないのですが……恩のある方なので、断るわけにも行かなかったのです。」

「………。」

リアはしばらく黙って手紙を見つめ、手を伸ばした。

ルームスタッフは、驚いたように目を丸くした。

「…………?どうしたの?」

「い、いえ……その、まさか本当に受け取っていただけるとは思わなかったもので……。どう聞いても胡散臭い話ですし……。」

リアは、ルームスタッフの顔を見た。

「………あなたが、嘘をついているようには見えなかったから。それだけよ。」

彼はなんと答えていいのかわからないといったように黙り込んだあと、微笑んだ。

「ありがとうございます、リア様。」



ルームスタッフが部屋を出ていった後、リアは手紙の封を切った。

中にはいっていたのは、たった1枚きりのカード。

そして、そこに書かれていた文を目で追ったリアは、思わず立ち上がっていた。

【愛しき鷹に、会わせてあげよう。】

【返事は、これを届けてくれた彼に伝えてくれ。】

……かつて、彼が言ったことがあった。

『お前の声、いいな。カナリアが鳴いてるみたいだ。』

それに、リアはこう答えたのだ。

『私がカナリアなら、エースは鷹ね。』

この手紙の人物は、あのやりとりを知っているのだ。

自分と、彼しか知らないはずのやりとりを。

(………エースは、生きてるんだ……。)

すとんと、そんな思いが心に落ちた。

それはやがて深く大きな喜びとなって全身を駆けめぐり、気がつけばリアは泣いていた。

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