第十一夜/ゲーム語り/『バトルライン』

1.ゲーム概要

デザイナー:ライナー・クニツィア

ゲーム種類:カードゲーム

プレイ時間:30分(著者実測:30分)

プレイ人数:2人

定価:2700円


「遠征は終わらぬ。我らが胸に彼方への野心がある限り。――勝鬨を上げよ。『王の軍勢アイオニオン・ヘタイロイ』!!」(『Fate Grand Order』より)


2.感想

★★Very Good!!~シンプルなルールによって模擬された両雄の戦いを堪能せよ!


 バトルラインはアレクサンダー大王とダリウス3世(ダレイオス3世)という二人の英雄の戦いをテーマにした対戦カードゲームです。


 箱を開けると中には二種類のカードと9個のポーンが入っています。


 二種類のカードのうち、数字と兵士の絵がかかれたトランプのようなカードを部隊カードといいます。書いてある数字は1~10までで、各数字につき6色、計60枚で構成されます(色も数字もまったく同じカードは1枚もないというのがミソです)。一方、人物や図案とともに何やらテキストが書いてあるカードを戦術カードといいます。


 はじめにテーブルの中央にポーンを横並びに配置します。このポーンの並びは9つに区切られた戦場からなる戦線バトルラインを表しており、個々の戦場での勝利を重ねてポーンを確保していき、最終的に敵軍を打ち破るというのがこのゲームの目的です。


 では、どうすれば敵軍を打ち破ることができるのでしょうか。勝利条件その1。9個のポーンのうち5つを確保する。これはまあ過半数ということで特にひねりはありませんね。勝利条件その2。9個のポーンのうち連続する3個のポーンを確保する。相手が先に4個のポーンを確保していたとしても、連続する3個のポーンを確保できれば勝ちなのです。これは熱いですね。戦記物好きなら一度はあこがれるであろう、一点突破による敵戦列の崩壊という戦術行動が勝利条件となっているわけです! さあ、俄然盛り上がって参りました。


 さてしかし、個々の戦場の勝敗はどのようにして決まるのでしょうか。その説明に入る前に、ゲームの進行について簡単に触れておきましょう。


 バトルラインは交互に手番を行うタイプのゲームです。各々7枚の手札は持ち、自分の手番には、手札から1枚を選んでまだ勝敗の決していないポーンの手前に置き、その後で部隊カードまたは戦術カードの山から1枚を補充し、手番終了というのが基本的な進行となります。


 各ポーンには互いに3枚までカードを置くことができるのですが、その3枚でポーカーのようにストレートやフラッシュといった役を作っていき、役の強さを競います。例えばフラッシュとストレートだったらフラッシュの方が強いので、フラッシュを作った側が勝ち、と言う風に。


 もっともお互いに3枚のカードを置き合う局面はそう多くありません。ルール上、勝敗が明らかなことが証明できれば、カードを出し切っていなくとも、ポーンを確保できることになっているからです。


 例えば相手がストレートを作ろうと赤の1、青の2とカードをだしている戦場で先にストレートより強いフラッシュを完成させた場合、どうやっても相手は勝つことができません。この場合フラッシュが完成させた直後に勝利宣言してポーンを確保することができます。


 なお、勝利宣言の根拠として場に出ているカードを使うのはありですが、場に見えていないカードを根拠に勝利宣言することはできません。例えば、自分が赤の2、3、4(ストレートフラッシュ)を完成させていて、相手が青の9、10を出している状況で、自分の手札に青の8があったとすると、相手は基本的にフラッシュ以下の役しか作れませんが、青の8はまだ場に出ていないので勝利宣言することはできません。


 ところで各プレイヤーは部隊カードの配置/補充の代わりに戦術カードの使用/補充を行うことができます。戦術カードにはワイルドカードや敵味方の部隊の再配置など、強力な特殊効果があり、うまく使えば戦局を大きく変えることができるでしょう。ただし、相手が既に使用した戦術カード+1枚までしか使用することはできないので、基本的に連発はできません。


 このようにバトルラインは、戦術カードという展開を派手にする要素はあるものの、基本的には複数のエリアで共通の山札から引いてきたカードを用いてポーカーを行うというとてもシンプルなゲームです。しかし、これがなんとも悩ましくて面白い。相手が出したカードから相手の手札を予測しつつ、どこのポーンを確保し、どこのポーンを捨てるのか。わかりやすいルールで、プレイ時間はさほどでもなく、しかし押し引きの妙をしっかり楽しむことができるゲームなのです。しかもテーマとゲーム性が高いレベルで合致している! クニツィア氏なのに! クニツィア氏なのに!


 二人用ということで遊ぶ場面は限られるかもしれませんが、まだ遊んでいないなら遊んでおいて損のない一作です。ゲームに興味がある方と最初に遊ぶゲームとしても良いかも知れませんね。


3.補足

 戦術カードはカードごとの強弱の差が結構あります。運の要素が大きすぎると感じたならば、戦術カードを使わずに部隊カードのみで遊んでみるのもありでしょう。終盤はほとんど詰将棋みたいになりますけど……。


 バトルラインはアレクサンダー大王とダリウス3世という二人の英雄の戦いをテーマにした対戦カードゲームです。ではどちらのプレイヤーがアレクサンダー大王なのでしょうか。正解は戦術カードのアレクサンダー大王をプレイしたプレイヤーです。


 バトルラインはアレクサンダー大王とダリウス3世という二人の英雄の戦いをテーマにした対戦カードゲームです。ではどちらのプレイヤーがダリウス3世なのでしょうか。正解は戦術カードのダリウス3世をプレイしたプレイヤーです。


 ゲームが始まった段階ではどっちがマケドニアでどっちがペルシアなのか決まってない! というかゲームが終わった段階でもどっちがマケドニアでどっちがペルシアなのか決まらないことの方が多い!


 ちなみに一人のプレイヤーがアレクサンダー大王とダリウス3世の両方をプレイすることはできません。二人の英雄はいずれも最強の戦術カード(強さ∞のワイルドカード)なのですが、二枚引いてしまうと一枚は手札を圧迫するだめちんカードと化します。

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