第十夜/ゲーム語り/『チケットトゥライド』

1.ゲーム概要

デザイナー:アラン・R・ムーン


ゲーム種類:ボードゲーム

プレイ時間:60分(筆者実測:60分)

プレイ人数:2~5人(筆者推奨:3~5人)

定価:5,600円


(ホビージャパン公式ページより引用)

 1900年10月2日-それぞれが世界の隅から隅までの長い旅を経て再会する特別な日。ロンドンの奇人フィリアス・フォッグが80日間での世界一周を成し遂げ、2万ポンドを獲得してから28年目の特別な日。旧友たちが集まり、フォッグの偉業を記念して、勝者100万ドル総取りの賭けをした。

 その目的は、ちょうど7日間でできるだけ多くの北米の都市を鉄道で旅をするというものだ。そして彼らはこの旅へと出発していった・・・


2.感想

★★★Excellent!!~今すぐ鉄道旅行に出かけよう


 記念すべき第十夜はわたしが敬愛するアラン・R・ムーン氏の代表作『チケットトゥライド』を取り上げたいと思います。


 大きな汽車の絵が目をひくオシャレな箱を開けると、中には北米の地図を模した一枚のボードと列車型のコマに得点表示用の丸いコマ、それから大量のカード(列車カード、目的地カードほか)などが入っています。DAYS OF WONDERのボードゲームはコンポーネントが綺麗かつ賑やかなのが嬉しいですね。


 さて、冒頭で引用したとおり、チケットトゥライドはジュール・ベルヌの『80日間世界一周』にあやかって、アメリカ(一部カナダ)の都市から都市へと鉄道旅行をするゲームです。


 始めにプレイヤーは何枚かの列車カードと目的地カードを受け取ります。このうち目的地カードについては、最低2枚を残して捨て札にすることができます。と言うのも、プレイヤーは目的地カードに示された二つの都市を自分の列車コマで繋げることで、ゲーム終了時にカードに書かれた勝利点を得ることができるのですが、未達成の場合はそれがそのままマイナス点になってしまうのです。はじめに自分の路線をどのように延ばしていくのかをイメージし、それに沿ってプレイしていくことになるわけですね。


 全員が達成すべき目的地カードを決めたらいよいよ旅の始まり。スタートプレイヤーから時計回りに自分の手番を行っていきます。


 手番にやれることは次の三つのうちのみです。


1.乗車券カードを補充する

2.手札の乗車券カードを出して列車コマを置く

3.目的地カードを補充する


 1.の乗車券カードの補充は、伏せられている山札または表になっている5枚の乗車券カードから行います。1手番で2回補充できるのですが、表になっている機関車カード(ワイルドカード)を引く場合は1枚しか引けません。山札から引く場合は1枚目で機関車カードを引いてしまっても引き続きもう1枚補充できるのでちょっとラッキーです。


 2.の列車コマの配置は、ボード上の路線の色に対応した乗車券カードを、路線のマスと同じ数だけ出すことで行えます。この時、列車コマを置けるのはマスの数にかかわらず2都市間のみです。3マスの路線のうち2マスだけ埋めるということもできませんし、3都市4都市と一度に繋げることもできません。なお、お察しのとおり既に列車コマがおいてあるマスに後から割り込むことはできません。また、既に置いてある自分のコマと繋げる必要は特にありません(あまり細切れだと目的地カードの達成が困難になるとは思いますが……)。この辺り、テーマ的には若干しっくり来ないような気もしますがキニシナイ。列車コマを置いたら、置いたコマの数に対応する勝利点を獲得して手番終了です(一度にたくさんのコマを置ける方が高得点)。


 3.の目的地カードの補充は、ゲーム開始時と同様3枚引いて最低1枚残します。これによってさらに高得点を狙っていくことができるわけです。


 これを繰り返していき、誰かの列車コマが二つ以下まで減ったらあともう一周だけプレイしてゲーム終了。その時点の得点に目的地カードの得点(減点)と最長路線ボーナスを加えてもっとも得点が高いプレイヤーが勝利します。


 チケットトゥライドを作ったアラン・R・ムーン氏は、ゲームデザインとテーマとが噛み合ったゲームを作ることで知られています。その中でチケットトゥライドのゲームデザインは必ずしもテーマに沿ってるかどうかわからないところもあります。上述のとおり路線がコマ切れでもゲーム上問題ないとか(馬車かなんかで移動したとか?)、一度使用した路線が使えないとか(短期間のレースだからもう出発しちゃったとか?)、鉄道旅行がテーマなのに、と思わないこともないです。


 一方でカードの絵柄を揃えて、盤上に鉄道コマを置いていくという行為にはそれ自体に達成感があり、首尾よく目的地カードに示された二つの都市を繋げたときの達成感はそれこそ旅行の達成感に通じるものがあるように思います。ゲーム終了時には盤面に色とりどりの鉄道コマが並び『思えば遠くまできたものだ』と達成感を分かち合うこともでき、ルールはともかく体験としては『友人との鉄道旅行レース』というテーマに合致したゲームに仕上がっているのではないでしょうか。


 達成感を分かち合う、と書きましたが、このゲーム、プレイヤー同士の妨害的な相互作用があまり強くありません。もちろん列車コマの置き合い、カード色の取り合いなどで他のプレイヤーを妨害すること自体は可能ですが、ただ妨害だけを目的に列車コマを置いたりカードを取ったりすることに多くの場合あまりメリットがないのです。


 勝敗を競うゲームであっても、潰し合いのゲームではない。そしてまた、みんなで盤面を賑やかにしていく楽しみもあるというのはチケットトゥライドの魅力のひとつと言えるでしょう。プレイ時間は初めての人や長考する人がいても90分そこそこ。慣れればもっと短いでしょう。ルールは簡単。それでいてしっかり遊んだ手応えのあるボードゲームであり、初心者からゲーマーまで幅広くお勧めできる一作です。


3.補足1〜運要素について


 チケットトゥライドは長距離の目的地カードの点数が短距離のそれと比べて著しく高いため、最初に配られた目的地カードによる運要素が大きすぎるのではないかという指摘があります。


 しかし、たとえ最初に配られた目的地カードが残念であっても、手番で追加補充することができるわけで、追加補充する目的地カードの選択や、追加補充に備えてのルートの伸ばし方でリカバリできるのもこのゲームの面白いところであり、またプレイヤーの実力が問われるところでもあると思うのです。


4.補足2〜バリエーションとオススメ


 チケットトゥライドは世界的にもかなり人気のあるゲームのようで、続編も多数作られています。このうち、単独で遊べるものは以下の通りです。


・初代チケットトゥライド(アメリカマップ)

・チケットトゥライドヨーロッパ

・チケットトゥライドメルクリン(ドイツマップ・入手難)

・チケットトゥライドレイル&セイル(世界)

・チケットトゥライドドイツ

・チケットトゥライドカードゲーム


 カードゲームは完全に別ゲームなのでおいておくとして、この中でオススメなのはやはり初代チケットトゥライドかな、と思います。


 不利なプレイヤーへの救済措置もあることなどから初心者向けとも言われるヨーロッパですが、その分ルールが増えていて少し複雑です。プレイ感として遊びやすいというのはその通りかもしれませんが、わたしは初代チケライを推します。


 とはいえ、どのチケライも面白いことは間違いありません。むしろ馴染みのある場所、いつか行ってみたい場所を舞台にしたものをチョイスする方が満足度は高いかもしれませんね。


 それでは良い旅を!

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