第六夜/ゲーム語り/『サムライ』
1.ゲーム概要
デザイナー:ライナー・クニツィア
ゲーム種別:ボードゲーム
プレイ時間:45分(筆者実測:45分)
プレイ人数:2~4人(筆者推奨:3~4人)
定 価:不明(絶版)
建武の新政の失敗により、足利幕府は日本を支配する力を得た。
しかしその支配力は脆弱だった。
全国各地で"サムライ”を率いた大名たちが、その支配権を拡大するため着々と準備を進めていた……。
2.感想
★★★Excellent!!! ~このゲームは最高! 45分に濃縮された戦国乱世~
このゲームはハンスイムグリュック版とファンタジーフライトゲームズ版のふたつがあります。わたしが持っているのはより古いハンスイムグリュック版なのでそちらを紹介したいと思います。
さて、ハンスイムグリュック版のサムライを語る場合、避けて通れないことがあります。それはアートワークです。
まず、箱に勘違いジャパニズム全開なお侍さんの絵が描いてあります。その脇には『このゲームは最高!』『幸せのハンス』などとわけのわからないことが書いてあります。この時点で「ひょっとしてこのゲームはかなり際物なのではないか……」と購入を躊躇する方も少なくないのではないでしょうか。
しかし、こんなアートワークとは裏腹に(失礼)、実に緻密に作られたゲームなのです。作者のライナー・クニツィア氏は今やドイツゲームの第一人者のひとりと言って良い偉大なデザイナーですが、氏の作品のなかでもかなり完成度の高い作品だと思います。
さて、箱を開けるとちょっと変わった形のボードが何枚か入っています。これらを繋げると、なんと! 日本列島の形になります。北は北海道、南は九州まで。この記事を書くときにファンタジーフライトゲームズのページでざっと確認したのですが、ゲームの舞台は室町幕府誕生直後のようです。なのに北海道があったり、江戸が重要拠点だったりします。そもそも江戸が内陸にあるのおかしいっすよクニツィア先生! と思わないでもないですが、細かいことは気にしてはいけません。
さて、日本列島を作ったらその上に仏像トークン、水田トークン、兜トークンを配置していきます。本作はこのトークンを取り合っていくゲームです。
さてそれではどのようにトークンを取り合っていくのか。
各プレイヤーにはあらかじめ20枚のタイル(全員が共通の組み合わせ)が分けられ、その内5枚をランダムに取って衝立の後ろに隠します。
手番が来たらトークンの周りにタイルを置きます。特殊なタイルを除き1手番に1枚だけしか置けません。あるトークンの回りの陸地マスが全てタイルで埋まったら、もっとも影響力の強いプレイヤーがトークンを獲得します。
例えば仏像トークンを取り合う場合は、回りに置いてある仏像タイルの数字(の合計)がもっとも大きいプレイヤーがそのトークンを獲得します。水田や兜のタイルは仏像トークンへの影響力を持ちませんが、武士タイルのようにワイルドとして使えるタイルは影響力に加えることができます。ひとつのマスに複数のトークンがある場合はトークンごとに影響力を比較します。引き分けの場合は誰のものにもならず、盤外に置かれます。見た目は陣取り風ですが、ちょっと競りっぽくもあるゲームですね。
ここまでの説明でなんとなく気づいた人もいると思いますが、このゲーム、自分一人でトークンの回りを埋めようとするととんでもなく効率が悪くなります。そこで、単に欲しいトークンを取ろうとするだけでなく、他のプレイヤーと利益を分け合うようにタイルを置いていくことで、効率よくトークンを入手できるようになるわけですが、この辺りの会話ではなくタイルを置くことによる無言のコミュニケーションが本作のもっとも面白い要素のひとつだとわたしは考えます。うまくコミュニケーションできてると思ったら、特殊タイルを使われてバッサリ裏切られたりするというのも、そうです(笑)。
そんなこんなでタイルを配置していき、1種類のトークンがなくなるか(引き分けにより)4個のトークンが盤外に置かれたらゲーム終了。点数計算に移ります。
この点数計算がちょっと曲者で、
・各トークンについて、単独トップが予選通過
・上記トークン以外の2種のトークンの合計が多い人が優勝
というルールになっています。予選通過のためにはどれか1つのトークンで単独トップを取らなければいけないけれど、勝つためにはそれ以外のトークンも集めないといけないということで、他のプレイヤーの動向を見ながらバランス良く取っていく必要があるわけです。
ルール説明がさほど難しくなく、でもじっくり楽しむことができ、特殊タイルによるちょっとした逆転要素もあり、それでいて45分で終わる。タイルが使える順番とトークンの配置が毎回ランダムなので毎回違った展開が楽しめますし、勘違いジャパニズムもつかみとしてはオッケー。何というかすごくよくできたボードゲームだと思います。このゲームは最高!
3.補足
・クニツィア氏は『サムライカードゲーム』というゲームも作っています。ちなみにカードゲームのくせして本作よりも広いスペースが必要になります。あと、箱がコンポーネントに対して大きすぎます。ゲームとしてはよくできていますが、わたしは特殊タイルのよる派手な展開が好きなので、本作の方が好みです。
・わたしは大絶賛していますが、クニツィアさんのゲーム全般が苦手な人からは「これどこにタイル置いても俺以外の誰かが得するじゃないですかーやだー!」だとか「自分の手番が回ってきてほしくない! つらい!」と言った声も聞かれます(笑)。
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