第15話 ネタバレ、新たなる仲間♂
「よかったわあなたのテ・ク♡ 昇天しちゃったもの♡」
「変な言い方すんな。そういうのは長谷川さんだけにしてくれ」
「ちょっと倉科さん⁉ 僕も遠慮させてもらたいんですけど」
試合の後、オレたちはバーに戻って再び同じ席で酒宴を催していた。
「そんで、あんちゃんの戦いは熱くなったかい?」
「脈略無く聞くなぁ。まあ、オレも知りたかったが」
なんか祝勝会みたいになってるが、目的が達してなければ残念会になってしまう。いやいや、呑み会自体どうでもいいんだけどね。
「尻
「ざけんな! 誰がお前の汚い尻なんかいるかっ。金出されてもお断り――てか、知り集ったじゃなくて、知りたかっただ」
「やーね、冗談よ、じょ・う・だ・ん♡ だってあたしのお尻はこだっちゃんのなんだから♡」
「ひぃっ」
化け物もとい姐さんからのウインクに顔を青くしオレの方に寄ってくる長谷川さん。男好きじゃないので嬉しくないし、姐さんが睨んでるしで変な三角関係みたくなってる。超嬉しくねぇ。
「あ、そうそう。交換条件のことなんだけど」
「おう。どうだった?」
突然の静寂、だけど店のピンクな雰囲気からドラムロールが聞こえてきそうなふざけた感覚を覚えたのちに、答えは出た。
「……ご・う・か・く♡ とーっても胸アツな戦いだったわぁ。お姉さん、好きな人がいなかったら惚れてたかも♡」
好きな人のことはともかく、惚れられなくてよかった……じゃなくて。
「姐さんのような
「おい、あんちゃん。心の声がダダ漏れだぞ。おいらも戦力アップは嬉しいがな」
「あ、僕も……なんでもないです」
長谷川さんの言葉を爛々とした目で見ていたので発言は無くなった、のだろう。
「ごめんね坊や。顔はイケてないけど、坊やとの戦いは本当に熱くなったから惚れかけたけど、やっぱり顔がタイプじゃないから惚れなかったのよね♡」
「いや、別に気にしてねえけど。つか、そこ掘り下げなくていいから」
顔面へのコンプレックスなんてなかったが、二度も言われると若干へこむ。でも惚れられなくてよかった。というかさっき褒めなかったっけか⁉
「このまま朝まで呑みましょ♡ ……って言いたい・け・ど、あたしこれでもやると決めたらやれるとこまでやりたいタイプなの♡」
「つまり?」
「今後はどんな風にするのかなって♡」
姐さんは笑顔だったけど、目は笑っていなかった。見極めようとしているのだ同士となったオレたちを。
リーダーを押し付けられたのはオレだが、基本的に方針はおやっさんが考えていた。だからオレもおやっさんを見た。
「もちろん、考えてるぞー」
なんかダメそうだこいつ。ブランデーをガブ呑みする赤っ鼻の頼りない吞兵衛だ。
「おいおい、何だそのゴミを見るような目はー? ちゃんと考えてますよ~♪ ってな感じなんだぜ」
「言動に信頼性がないんだよ。てかまずは酒を置け! 呑むなとは言わんが、今はとにかくテーブルの上に置け!」
「ちっ、ちょっとだけだかんな」
なんか今までで一番怒ってる気がする。この人にとって酒は身体の一部というやつなのか、いやメガネキャラのメガネのようにおやっさんにとって酒が本体なのだろう。哀れというべきか、本望というべきか。
「次にどうするか言やあいいんだろ?」
「わかってるならさっさと言え。勿体つけるな」
へーへー、と適当に返事しながら酒に手を付けようとしたので叩き落とす。
無礼講がすぎるだろ、と睨みながら考えを話し始めた。
「次は立河にしようと思ってるんよ」
「立河? また呑むのか」
「なわけないだろ。場所は変なモチーフんところだ」
もう言ったからいいだろ? という目で見てきたので、まあいいかと思い、よし! と待った状態を解いた。なんだか犬の調教みたいだ。
「指定の場所があるってこ・と・は、おじ様は何が来るかわかってるんですよね♡」
「まあ、大体は」
行き当たりばったりなんていうかと思ったが、意外にも考えあってのことだと知り、心の中で頼りない吞兵衛ではなく頼ってもいい吞兵衛に昇格した。
「お尻なら……お知りなら、教えてもらってもよろしいかしら♡ 事前に情報があればだいぶ戦いも楽になるんで♡」
「確かに、楽になるというのは重要だな。みんなの生存率にもかかわってくるし」
「倉科さんの場合、面倒ごとが減るのが嬉しいのでは?」
「む、わかってやがるな」
心を読まれてしまった。出合ったのは少し前の話だというのに、ずいぶんとオレのことを知られて……姐さん、嫉妬の目で睨まないで!
「別に教えてやってもいいんだが……必ず来るという保証もないしな。逆に言わんほうがいいんじゃないかな」
「結局、それかよ。事前情報なしで戦えってことか?」
「どんな敵でも油断はするな、だけかな」
「そんなんいつもとおんなじじゃん。あのバカヒーローの時とかな」
雰囲気はともかく、あいつの頭は残念だっただけにいろいろ油断してしまうところがあった。油断大敵の良い例だった。
「バカヒーローって何? もしかしてあなたのライバル♡ 胸アツ♡」
「前に言ったろ、核のことだよ」
「ああ、そういえばそうだったわね♡ ちょっと思ったんだけど……坊やってもしかして、魔法使い最強?」
「は? なんでそう思ったんだ?」
ルーキーが最強なわけがない。そういう頭だから自分がどれくらいすごいのかわからなかったが、
「そうだな、あんちゃんは実際最強だと思うぞ」
「は⁉ おやっさん何言って」
「僕もそう思います。倉科さんは最強です」
「いやいや。最強最強ってオレ西京漬けみたいになってっし」
褒め慣れてないせいで否定のツッコみが雑になってしまった。……気を取り直して。
「別にオレは最強じゃないと思う。おやっさんとか長谷川さんとか、勝手知ったる相手なら勝てるかもだけど、歴戦の猛者とかまだ見ぬ敵とかには普通に負けると思うし」
今まではたまたま勝てただけで、バカヒーローにも勝負としては勝ったけど試合としては完全敗北してる。
だからどうしても自分が最強とは認められない。
「まあ、あたしにもきっちり勝ったことだし、最強ってわけじゃなくても坊やがすごいことだけは確かよ♡」
「謙遜は美徳ですが、やりすぎれば嫌味になります」
「まあ、あんちゃんにはそれなりに期待してる。そう思っておけば今はいいんじゃないか?」
「お、おう。適当に頑張るわ」
予想外のフォローにドギマギして、なんかこうむず痒い。褒められるのもフォローされるのも孤独な自分には勿体ないと思ってしまうからかもしれない。
「まあまあ♡ 今日の所は呑みましょ♡」
「そうですね。こういう席は毎度あるわけではないですし」
「おうおう。呑めるだけ呑むぞー」
「おやっさんはいつもと変わらんだろ」
アニー・Kという新しい同士の加入を祝した呑み会が始まる。夜中という大人な時間の幕開けだ!
……でもオレは終電で帰った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます