いざ前哨戦
何もせずに過ごしていたら、いつの間にか五月十日になっていた……こわい!
……いや、僕だってですね? 副会長として生徒総会の下準備してたんですよ。
みんながスピーチ考えてたから! そう! 僕は悪くないんです!
「じゃあ、行ってくるよ」
……決戦に向かう勇者かよ、お前。
「前哨戦、勝ちに行きますよ」
「応援してますからね」
……なんか熱いな。青春って感じだ。
「涼真は何かないのか?」
すいません。他のこと考えてました。
「ああ――まあ、その、頑張ってくれよ」
「ああ。期待に添えるよう頑張ってやる」
そうして校則改定への前哨戦、「生徒総会」が始まった――
*
「今日の生徒総会は一味違うぞ」
透子は静かに、それでいてはっきりと話す。
その姿はまさに"生徒会長"。デキル女、という感じである。
まあ、これから話す内容はそんなものとは正反対に近く、それでいて透子らしいものなのだが。
「今日はある校則を改定する、という議題を生徒含む皆様にお知らせする。それは――」
「女子制服の規定の変更、についてだ」
「昨今、女子高生の間ではスカート丈を短くし、脚を綺麗に見せたい、オシャレにしたい、という風潮がある。実際、私の元へもそういう意見書が来ることもあった」
「実際、この問題は何代も前の生徒会でも議題には上がっていたらしい。が、実際に改正の議論がされることはなかった」
「しかし、私は生徒の自主性を尊重し、制服の規定を改善しても良いと思う。それが、私だけが望んでいることではないということは皆分かってくれると思う」
「生徒会長、吉田透子はここに宣言する! 女子制服の校則改定を成し遂げる! そのために、皆の意見を聞きたいので、五月十七日に投票を行う。――『女子制服の校則改定のための仮施行』についてだ」
「この投票で生徒総数の過半数を越えれば、仮施行を九月まで行うものとする。以上! 何か質問のあるものはいるか?」
*
「なんかあっけなく終わりましたね」
「拍子抜けというか、なんか残念です」
……日本人には他人指向型の人が多い、と聞くし案外そんなもんなんだろう。どちらかといえばグイグイ押していく透子みたいな人間の方が希少だ。
「まあ、上手くいったから良いんじゃないのか?」
のんきな俺である。
「そうですけど……本気で考えたスピーチだったのでもっと反応してほしかったです……」
そう思えば最終兵器「オリハラ」も起動しなかったなぁ……
「まあ、大っぴらな反対も今の所は出なかったし、順調と言えるだろう。十七日の準備をしたら、皆休むと良い。それでは、かいさ――」
「失礼します。風紀委員長の――」
……まあ、そんなに簡単には行かないのが世の常だろう。
そうして、俺たちの前に強敵が立ちはだかったのだった。"予想通り"……
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