作戦開始

「どうやって教師を――」


「どうやって生徒を――」


 

 ……うん、なんか園田くんはやる気満々だね。邪魔すると悪いかな。


「織原さん」


「はぃ……」

 なんか死にそうな声してるな……辱めを受けてたから仕方ないけど……


「ごめんね、巻き込んじゃって……」


「いえ、透子会長はいつも唐突なので……びっくりしただけです」

 力なく笑う彼女。



 ちょっとそこ! お構いなしに話進めない!


 園田くん、本気出すと周りが見えなくなるタイプな人かな?


「まあ、みんなもやる気になったことだし、これも何かの縁だと思って力を貸してくれると嬉しいかな」


「それは……園田くんも頑張ってるし……私にできることならなんでも……!」


 ん? 今なんでもするって――



「おーい、そこのお二方。織原さん、モデルやってくれるって」



「おお、それは助かる」


「……/// それは……助かりますね!」


「ふぇぇぇ……そんな……」


 ”なんでもします”は禁句って学校で習いませんでした?あ、普通は習いませんね。ハイ。


 かくして、僕たち生徒会は最終兵器「オリハラ」を獲得し、五月の生徒総会のスピーチを練ることになった。


 *


「いくらなんでも『趣味』なんていう理由、通用しないよなぁ……どうにかしてそれらしい理由を考えなくちゃ」


「身だしなみだけじゃだめなの?」


「それはさっき僕も突っ込んだけど、たぶん風紀側も突っ込んでくるだろうね。だから理由付けとしては弱すぎる」


「今までもこういう相談があったのなら、それを押し出してみるのはどうでしょうか」


「それもいいけど、たぶん根本的な解決にはつながらない。結局は戯言として却下されるだけだ」


 なんだか議論が堂々巡りしている気がする。


「あの……」


「何だ? 織原。何か案でもあるのか?」


「とりあえず、仮施行に持ち込めばいいんですよね……?」


「ああ、そうだ」


「なら――データを出すしかないでしょう。客観的事実を突き付けることが一番効果的だと思います」


 なに、このデキル女の子……いつもの織原さんじゃないよ?!


「ねつ造でも良いんです。出来る限り今の丈よりも短くした方がよい、というデータを集めて、信ぴょう性を高めるんです。その次は、生徒の声です。生徒の中に改正を望んでいる人がいる、ということを打ち出すんです」


「そうすれば――風紀委員ぐらいなら捻ることができます」


 ……こわい。いつもこんなことを腹の中で考えてるのかな……


「そうか、それなら合法的に進められるな!」

 お前は何考えてんだ。


「織原さん……その手があったか!」

 無能ぞろいかよ……



 かくしてダークホース「オリハラ」の活躍により、五月十日の生徒総会のためのスピーチ原稿ができたのは、五月八日の放課後だった――


 その間僕は何してたかって? 何もしてませんよ? ええ。

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