それは絶景で
扉を開けると美少女が――
なんてことは、実際にあるはずもないのだが……そこには、確かに"それ"があった。
「どう? 少し印象が変わったでしょ」
なぜか得意げな透子は無視するとして――
黒のニーソックスとタータン・チェックのスカート。そこに挟まれている、瑞々しく透き通るような肌――これこそ、「絶対領域」だ。
園田が食い入るように見つめる。健全な男子高校生だからね、仕方ないね。
「う……そんな、ジロジロ見ないで下さぃ……」
語尾が消え入りそうな声になっている織原。それのおかげで園田はサルのようなギラギラとした視線から人間の優しい目に帰った。
「ご、ごめん。綺麗だからつい――」
「はうっ?! 綺麗だなんてそんな……」
……犬も食わないってやつだよ、コレ。
「あー、あー、お取り込み中の所すいませーん。感想聞かせて貰っても良いですかー?」
この空気に割って入れるのか。さすが透子だ、空気を読まない。
「うん、僕は賛成だ。これで女子生徒がもっと身だしなみに気をつけてくれるならね」
ほんと園田くんチョロすぎない? チョロインだよチョロイン。
「うぅ……」
こうして若干一名を無視する形で、この日の生徒会は「校則改正」について話し合うこととなった――
*
「校則の改定って何が必要なんだ?」
「涼真はそんなことも知らないの? 生徒手帳に書いてあるでしょう?」
……副会長なのに読んでなくてすいません。
「はぁ……改定には全校生徒の三分のニ、教師の二分の一以上の賛成が必要よ。優しい私に感謝しなさい」
お前は優しくない。最初から言え。
「で、だ。具体的にはどうするんだ? 間違いなく風紀は反対しに来ると思うが」
「そうなのよね……あの子、頭硬いから……ダイヤモンドぐらいに」
ダイヤモンドの硬さっていうのはあくまでも"硬度"で、靭性じゃない。要は瞬発的な力には弱い。まあ、どうでもいいけど。
「いくら透子の求心力が高いって言っても三分のニはさすがになぁ……」
「ということで、とりあえず仮施行へと漕ぎ着けさせることにする。それなら過半数で実現可能だから」
「仮施行ってなんぞ」
「新しく校則を作る、既存のものを改正するという時に仮導入できる、という素晴らしい制度よ」
「次の生徒総会――5月ね、そこでこの改正について話すわ。そしてその二週間後、十五日辺りに『臨時生徒総会』を開かせてもらう」
「議題は『スカート丈の校則改定のための仮施行』について。それで過半数をとってとりあえずは仮施行させればいい」
「それじゃ、実際の改正はいつになるんですか?」
園田くん、よくぞ聞いてくれた。
「そうね……九月か十月、になるでしょうね」
「結構間が空くな、それ」
「夏休みがネックね……まあ、仕方ないのだけど」
「じゃあ、とりあえずは五月に向けての計画を練りますか――」
そうして僕たちは、改定のための仮施行のための戦略を練ることになった。……もちろん、織原さんはガン無視で。
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