第2話 ミッション

 ファルコンが、この朱い極冠を抱く惑星に辿り着いたのは78h前のことである。

 こんな辺境宙域のマイナーミッションでは、いくら帝国の諜報管理局とはいえ、シアター(大型遊覧宙船)をあしらってくれるはずもなく、乗客も貨物もごちゃ混ぜの輸送宙便での来港だった。虫人、つまりベイグズでもあるファルコンにとっては、窮屈さなど気にもならないものであったが。


 宙港に降り立ったファルコンは、久しぶりに新鮮な光景を目の当たりにしていた。そこには帝国の何処に行っても蔓延っている普通人類種ノーマルヒューマンの姿などは殆んどなく、四つ足で跋扈する地元住民ばかりが目に付いたからだ。

「これなら必要もないな」

 そう呟いたファルコンはゴーグルを外し偽膜をあげ、普人との決定的な違いである複眼を顕にして久しぶりに肉眼のみで辺りを見回した。

「ついでにコイツも日に当てて行こうかな」

 そしてそのまま中脚の空間迷彩を解除して、四つ腕で大手を振って歩き始めることにした。


現地のエージェントからは、ターミナル近くの予約済みの宿泊施設に案内人からの連絡が入るとの事。しかしファルコンは、この退屈で長くなりそうなミッションのため、先ずはぶらぶらと辺りを徘徊して英気でも養う事を選ぶのであった。

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