episode3 3時のおやつ

「ふぅ………」

 私たちは、カフェに来ていた。

 時間は3時30分になるところ。

 3時間ほど歩き回った私たちは、休憩がてらカフェに入った。


「ここ、パンケーキが美味しいんだって」

 そのカフェは、前に学校で話題になったカフェだった。

 たしか、オープンしてまだ1年経っていないはず。

「あら、そうなの?」

 お母さんは、メニューのパンケーキのページを開いた。

「前に友だちがおすすめしてくれたんだ」

「たしかに、オススメみたいね。ほかのページよりこってるわ」


 色々なやんで、結局、お母さんはプレーンのパンケーキとコーヒーを注文した。

 私は、前においしかったと教えてもらった苺のパンケーキとアイスミルクにした。


 先にアイスミルクとアイスコーヒーがきて、私たちはホッと一息つきながら、この後の話をした。

「食べ終わったらどうしようか?」

 冷たいミルクが喉を濡らす。

 あまり水分補給をしていなかったから、喉のひんやりとした潤いは心地よかった。

「結構疲れたよね」

「たくさん歩いたものね」

 歩きやすい靴を履いてきたのに、それでも足の裏が痛くなるくらい、私たちはたくさん歩いた。

 私はお店の窓から外を見つめた。

 行き交う人々は楽しそうにおしゃべりをしたりしている。

 他に行きたいところはないか考えてみるけれど、『ここに行きたい』と思う特定の場所はやっぱり思い付かない。

 これまでそうしてきたように、目的もなく歩いて、気になったお店にはいるのも良いけれど、そうするには少し疲れがたまりすぎている気がする。

「………家に帰る?」

 私がそう提案すると、お母さんも少し考えて、けれど、それがいいと思ったらしい。

 答えは思いのほか早かった。

「そうねぇ………まぁ、買ったものの整理もしたいし」

 そう。

 私たちはウィンドウショッピングといいながらも、歩いているうちに結局色々買ってしまった。

 買いすぎて何度か車に物を置きに行ったくらいだ。

「それじゃあ、決まりだね」

「そうね」

 それから程なくして、パンケーキが運ばれてきた。


 分厚いパンケーキにバニラアイスに生クリーム。苺はつやつやしていて、イチゴソースもたっぷり。

 私が頼んだのは、苺のバニラパンケーキ。

 大好きな苺を1つ口にいれただけで、頬がゆるむ。

 お母さんの前にはシンプルなパンケーキ。

「……!あら、シンプルなのに美味しいわ。これならプレーンでも飽きずに最後まで食べられそうね」

 あまりおなかがすいてないからと、クリーム等のトッピングのないプレーンを選んだお母さんだけれど、「味の変化がないとつらいんじゃない?」と運ばれてくる前に話していたのだが、その必要はないとお母さんは言う。

「えー、遠慮しなくても分けてあげるのに」

 私がそういっても、お母さんは本当に大丈夫といって、もらってくれようとはしなかった。


 ほんのりあたたかいパンケーキに、ひんやりとしたバニラ。

 初めての感覚に酔いしれながら、私はゆっくり堪能した。

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