episode2 昼食
結局、9時になるまでお母さんは目を覚まさなかった。
「お母さん、寝るならベッドで寝よ~」
体を揺すりながら声をかけると、お母さんはゆっくりと目を開けた。
「ん……。いま、何時……?」
ゆっくりと腕を上にあげて、「んー」と伸びをした。
「9時だよ」
「あら、もうそんな時間……?」
どこか眠そうなお母さんは、目をごしごしと手の甲でこすりだす。
「せっかくの休みなんだもん。まだ寝てても大丈夫だよ」
そっとその手を止めて、遠回しに二度寝をするように訴えてみる。けれど、お母さんはもう完全に目が覚めたようだった。
「これ以上寝たら、夜に寝れなくなっちゃうかも」
「そんなことないよ。疲れてるんだから、体を横にしてしっかり休まないと」
「それじゃあ、今夜は早く寝るから。それなら、いいわよね?」
「……うん」
いつもそうだ。お母さんがこうと決めたら、ほとんどそうなる。私はいつも言い負かされてしまうから。
お母さんがシャワーにいっている間に、お母さんの少し遅めの朝食を用意する。
卵焼きは焼く前に味付けを少しだけ濃くした。
できてから、卵を切り分けて、ひときれつまむ。
「……まだ薄かったみたい……」
やっぱりいまいちな出来映えだった。
お母さんは朝食を美味しいといって卵焼きも残さず食べてくれた。
味が少し薄くなかったか聞くと、『気にならないよ』と言われた。でも、少しだけ食い下がると『気になるなら、牛乳の量に気を付けるといいよ』とアドバイスをくれた。
お母さんに今日の予定を話し、買い物へ出る。
一通り買い物を済ませて、家に帰り冷蔵庫や冷凍庫に詰めたあと、お母さんの提案にのってウィンドウショッピングに出掛けた。
「まずはお昼にしよっか」
お母さんのいうことはもっともだ。
もう12時を少し過ぎている。
「どこにする?」
「どこか食べに行きたいところとか、もしくは何か食べたいものとかないの?」
「私はないよ?お母さんは?」
「んー、これといってないのよね……」
結局、ファミレスで食べることになった。
「オムライスと、ハンバーグセット一つずつお願いします」
席に案内されて、メニューを見た私たちは、案外すんなりと何を食べるか決めた。
「はい、それではご注文を確認します。オムライスが……」
待つ間は、他愛のない話をした。
学校でのこと、最近見た面白いテレビ、友達の話……時間はあっという間にすぎて、店員さんがオムライスとハンバーグセットを運んできた。
「「いただきます」」
私が頼んだのはオムライスだった。
ふわふわとろとろの卵と、ほどよい色加減のケチャップライス。
一口食べただけで思った。
人生で1・2を争う美味しさだ。
「お母さん、これ、オススメなだけあってすごく美味しいよ!」
ハンバーグセットのポテト食べていたお母さんはオムライスに興味を持ち始める。
「ほんと?一口もらってもいい?」
「うん」
一口食べたお母さんの頬は幸せそうにほころんだ。
「本当だ。……あなたもハンバーグ食べてみる?」
「うーん……じゃあ、一口もらおうかな」
昼食後、私たちは友達と買い物に来た感覚でショッピングした。
お母さんは童心に帰ったみたいと笑っていたし、私もお母さんと友達みたいに買い物ができて楽しかった。
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