耳元で聴こえる心



「いったい…。」

手を開くと赤黒い血が大きくはない手のひらいっぱいに広がっている

「やっぱりピアスなんてあけなくてもよかったな。暇だったからやってみたけども。」


とてもジンジンする

感覚が無くなってきた

耳たぶだけならまだしも興味本位で軟骨にまで穴をあけてみた


久しぶりに“痛い”なんて言葉を口に出した

お母様には心配されるんだろうな

お父様はなんて言うだろう

……妹は、シオンは?…見せなきゃバレないか無駄に心配性なのはお母様譲りで困る


ーーーーーー


「お母様、洗い物は終わりました他に何かありますか?」

〖ありがとう、ベル。もう大丈夫だからどこかで遊んでるシオンの相手をお願いできる?〗

「…はい、分かりました。」


何処にいるか検討はついてる

ガチャッ

中庭へ通ずるドアを開けるとそこには猫と戯れるシオンの姿

家から姿が見えなくなると大体ここにいる

僕が動物に好かれやすい為かこのように猫など遊びにくる

「またここに居たのか?」


少女はこちらを振り向き

『ベル姉様に惹き寄せられた子達と遊んでると、なんだかベル姉様とも触れ合えてる気がして。』

「僕は猫じゃないぞ。」

『ベル姉様、猫みたいな性格だもの。』

「猫みたいにフラフラ出来たら僕だって苦労しない。」

猫を撫でるシオンの手が止まる


『…でも、ずっとは傍に居てくれないでしょ。』


その言葉はあの子の今の気持ちを

素直に指してる気がしてならない


初めてシオンの

負の気持ちが音となって僕の耳に聞こえた




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