キョンであるオレは「ふつうの人間」ではない!!

月乃兎姫

キョンであるオレは「ふつうの人間」ではない!!

本作はハルヒシリーズに出てくる主人公であるオレこと『キョン』とは何者なのか?

を独自にまた真面目に書いた『小説』です。

それを主人公である「キョン』に語らせると言う創作2次小説です。

※これを考えたのは驚愕が出た当時(2011年)です。

※原作・アニメを全部見た人向けなので、ネタバレにご注意を。

※また他人の考察などは一切見ておりません。独自の理論です。



『キョンであるオレは「ふつうの人間」ではない!!』


 うん。これはタイトルだな。『ふつうの人間』ではない?そりゃそうだわ、なんせオレはハルヒシリーズでは『主人公』だし、あだ名オンリーで15年近くも引っ張ってるんだからな!

 そりゃ『ふつうの人間』じゃねぇよ。だからと言って『ただの人間』でもないぞ!

……意味同じだしな。それに今も時給934円(東京都の最低賃金+2円)でこの説明役ナレーションとして雇わてるし。

 大体誰なんだよ、オレのこと『キョン』ってあだ名で呼び始めたやつわ!!

『佐々木』か?いや違うよな。アイツには初めて会ったとき、それで笑われたしな。

いつの日かこのオレが犯人を探し出して古泉ラヴ《顔を近づける罰》させてやれば…………いや待てよ、犯人がハンサムBL好きだったらご褒美になっちまうよな!?

 まぁいい、この件はあとでウチの妹とゆっくり考えておくから待っててくれよな!」

(そういや、ウチの妹もキャスト欄に『キョンの妹』って書かれてなかったか? アイツも名前ねぇのかよ。ってかあだ名に属性名ぞくせいめいってオレよりも酷い扱いだぞオイ!)



 そもそも読者は何でキョンオレのことを『ふつうの人間』だと思ってんだ?

えっ? 古泉が? 長門が? そう言っていたってのか? アイツらめ適当言いやがって! 

 大体そんなこと『いつ』言ってたんだよ? 『序盤』? おいおい、待てよ。それは本当なのか?

 ……あっ、うん。今調べたら確かに古泉も長門も『そう』言ってたわ。だけどよ、それは『序盤』の話だろ。時間は流れゆくんだぜ!時間とやらは決して止まってはくれない。それに『序盤』って単語そこんところがちゃ~んと『伏線』になってるわけよ。

 原作をよ~く読めば解かることだが、それ以降は誰もオレのことを『ふつうの人間』とは言ってないわけだろ?つまりはそうゆうことなんだよな!な!」


『人間』ってやつは1度『そう』だと思い込まされてしまうと、それが絶対的に『そうなんだ!』という『固定概念』に縛られてしまうからな。ざわってるナレーションの人も言ってたが、『それ』が人間の怖いところだ。


 何故『固定概念』なんて俗物的な話を主人公であるキョンオレがするかと言うと、ハルヒシリーズにおいての『時系列』に関係する話だからだ。


 時系列とはふつう物事の歴史を、時間通り『過去』『現在』『未来』と順番にわけ、その順列どおりに辿ることだ。だが、ハルヒシリーズにおいての時系列は『そのまま』の意味ではないらしい。


 そもそもハルヒシリーズにおいて『最初の時系列』とはなんぞや?これを聞いた人の大半が3年前の七夕がどう~とか言うだろ。かくゆう主人公であるキョンオレscarlet本作の作者に教えられるまでは『そう』だと思ってたんだわ。実は違うらしいぞ。


 マジかよっ!? って思った読者のみんな!その反応は良い傾向だぞ!良い感じに策略にハマってるわけだしな。

これは前に長門が言っていたことなんだが、『この世界において、過去、現在、未来は必ずしも連続していない』つまり過去、現在、未来ってやつは『結びつきがない』……らしい。


 だから『1番最初の時系列は3年前の七夕』ではなく、オレがみんな読者と最初に出会った時に言った『サンタクロースがどうたら~』って話が1番最初になる。つまりはだ、過去や未来は関係なしに、オレとみんな読者とが体験した時間が『そのまま時系列』ということになるわけだ。


 ま、とは言っても過去は過去としてあるし、未来は未来として確実に存在している。だが、いくら平行世界・無限の可能性パラレルワールドがあろうともそれを『認識』してくれる存在いなければ『それは存在しない』。

 これは古泉も『人間原理』で問いてたな。「我観測ス、故二宇宙アリ」人が観測認識することによって、初めて『それ』が存在して『認識』されるわけだ。



 うーん、何だかややこしいことになってきたぞ。こんなとき古泉のヤツが入れば上手く説明してくれるのだが、オレの知らぬ間にハルヒのヤツがどっか連れてっちまったからな。

 ハルヒのヤツは、いつもいつもオレに面倒事押し付けやがって、帰ってきたら説教してくれよう!!



 何故主人公キョンであるオレがクドクドこんな事を言っているかというと、

ここにキョンオレが何者かのヒントが隠されているからだ。



 そもそもなんだが……ハルヒのヤツは本当に『願望を実現する力』とやらを持ってるのか?

 前に古泉は持っていると『断言』したが、長門や朝比奈さんは『断言していない』ぞ。原作をよぉ~く、見ている読者なら解かるが、『情報爆発を観測した中心に「涼宮ハルヒがいた」』と記されてる。そう『ハルヒはただその場にいた』だけなのだ。


 古泉は『断言』し、長門、朝比奈さんは『断言していない』ここにも大きなヒントがあるのかもしれないな。

 古泉は朝比奈さんのことを『信用していない』し、朝比奈さんは朝比奈さんで、古泉のことを『あまり信用しないで』とか意味深なことを言ってたしな。

 そもそも古泉は「もしあなたが困ったら、ボクは1度だけ組織を裏切りあなたの味方になります」と言ったけどあれはなんだ?これからその危機的状況とやらにに陥るのかオレは!?


 大体だな、『自分は機関末端である』と言っていたのにも関らず、後に出てくる対立機関の橘京子は「古泉は機関の創立者で最高責任者」って言ってて古泉の話は矛盾してんだよ。


 やっぱりここは……長門オンリー?


 いつも主人公キョンであるオレを助けてくれるある意味スーパーウーマン的存在だ。だが、あの夏休みのループでエラーが溜まり『ハルヒの消失』を招くことになっちまった。

 ほんといつもあいつには負担くろうかけてるよ。よし今度の休みには図書館に連れて行ってやろう!前にハルヒの閉鎖空間とやらに閉じ込められた時に『約束』したしな!


 読者のみんなは長門のことを無表情で冗談も言わないやつ!とか思ってるかもしれないが、最近はアイツも少しずつ変わってるだぜ。なんでも『情報統合思念体長門の親玉から情報連結が少しずつ解除されつつあって、少しずつ普通の人間に近づいている。』と冗談交じりにオレに笑いかけてたしな!



 おっと話が大幅にそれちまったな。本題に戻ろうか。


 そもそもハルヒの『力』ってやつは『誰が認識』してんだ?……やっぱり主人公キョンであるオレと読者ってことでいいのか? 


 そもそもハルヒのヤツは、オレと読者の前でしか『力』を使ってねぇぞ。閉鎖空間や古泉なんかの能力は『既に力を使い、存在を認識させた』後の話だしな!

 ここも時系列は前後するがストーリー原作どおりが本当の時系列となり矛盾にはならない!

 だから『ハルヒ自身に『力』』があるとすればいくつもの矛盾が出てくるんだよなぁ。



 ……ということは、だ! ハルヒのヤツの『願望を実現する力』とやらは、オレと読者自身がその力ってヤツを、『見て』『聞いて』『認識』したから『存在する』んじゃねぇか?

 まったくご都合主義も極まれりってやつだな。



 そもそもハルヒのヤツは初登場のときがぶっ飛んでたよな。


「東中出身、涼宮ハルヒ。ただの人間には興味ありません。この中に宇宙人、未来人、異世界人、超能力者がいたら、あたしのところに来なさい。以上。」



 ……待てよ!?今気づいたけど、『異世界人』がいないぞ!?


もし、もしもの話だぞ、ハルヒのヤツに『願望を実現する力』とやつがあるとするならば、

長門>朝比奈さん>古泉の登場順では異世界人がおらず矛盾になるし、そもそもハルヒのヤツは『ただの人間には興味ない』と公言したわけで、つまりはだ、主人公キョンであるこのオレに興味がないってことになるぞ。あのあとすぐに古泉がオレのことを「あなたはふつうの人間です」と言っていたし、長門も部屋に招いてくれた時、「私はあなたのような大多数の人間ではない」と言ってたしな!


 だとするとだ、『ハルヒ』か『古泉・長門』のどちらかに矛盾が生じて、『この矛盾』こそが『主人公であるキョンオレがふつうの人間ではない!』と言う1番の証明になるのではないだろうか?またこの事が時系列はオレが体験したとおりの順って証明でもあるな! 読者のみんなはこれについてどう思う?是非意見を聞かせてくれ!


 おっと、この話はまだまだ続くぜ!休ませてやるものか!!


 それとだな、『3年前の七夕』も怪しくないか?


 だってよ、中学生のハルヒが学校に忍び込んでグランドにあの象形文字を書いて、それが情報爆発とやらを引き起こし、そのときに『力』を得たんだよな?読者のみんなも『この認識』で合ってるよな?……うんうん、だとすればますます違うだろう。


 だってよ、そもそも中学ハルヒのヤツはオレに指示するだけで、文字を『実際』に書いたのは主人公キョンであるオレなわけだろ?

 大体ああいう、魔方陣?文字?を書いて力を得る場合ってのは、書いた、ないし完成させた人間に直接力が宿るモノだろ?

 それにだぞ、『情報爆発の中心の涼宮ハルヒがいた。』……いやいやキョンオレもその場にいましたよ!だったらオレにもその『その力』とやらがあってもいいじゃないかと思う今日この頃。


 あとこの後の会話もぜってぇ伏線になってるだろ。中学ハルヒがオレに問いた、宇宙人、未来人、超能力者、異世界人とやらの話だ。

 勘の良い読者ならもう気づいているだろう……自己紹介時とは『順番』が違うのだ。

 これも今後の話に続くか、主人公であるオレキョンの正体をしめ……



 と、そこへ、

「ってキョン!私に内緒で、な~に1人で楽しんでんのよぉぉ!!」


 文芸部の部室のドアを壊れんばかりに『原因』であるハルヒが乱入してきた。


「誰も楽しんじゃいねぇよ。むしろ時給934円(東京都の最低賃金+2円)で本作の説明ナレーションまでさせられてんだぞ! ってかハルヒ今までどこ行ってたんだ?」

「……確かに時給934円(東京都の最低賃金+2円)ってのは安すぎるわね」


 おいおい、なんだぁ~その話を誤魔化してます!って感じは、余計不安になるわ。


「いえいえ、ちょっと学園の校門まで行ってたんですよ。ねぇ朝比奈さん?」


 壊れたドアを避けるように古泉が部室に入ってきた。


 ってか思いっきりドア壊れてんじゃねぇかよ。一体コレを誰が直すんだ?……まさかオレじゃないよな?


「ふぇぇ~、なんですか~これ~? どうして私、ネット小説なんかに出てるんですかぁ~?」


 朝比奈さん、状況判断能力ありすぎだろっ。いつこれがネット小説だと気づいたんだ? 未来人だからか?


 校門? そこで一体何してたんだ? この朝比奈さんとハルヒの格好が関係あるのか?

 古泉は普通の制服だったが、朝比奈さんとハルヒは例のバニーガールの衣装を着ていた。


「な~に言ってるのよキョン!この格好で校門ときたら、勧誘よ勧誘!部費をたんまりせしめるには部員の数がモノを言うのよ!野球部なんか見て見なさい!甲子園にも行けないクセに部費はウチよりも多いのよ!それは何故か……部員が多いからよ!!」

「いや、それだけじゃねぇだろが……」


 この怪しげな文芸部に部費が出てるだけでもありがてぇっての。まぁ、部費は多いに越したことはないけどな!


「そんなことよりもキョン! あんた何で来なかったのよ! まさかサボり? 団長である私を差し置いて生意気ね!」


っと両腕を組みながら、ご立腹の我が部の団長様。


「いや、待て待てハルヒ。そもそもオレは放課後に部員を勧誘するって話聞いてねぇぞ!」

「そんなものはフィーリングで感じなさいよ!フィーリングで!」


 そんなもん感じとれるか!!


「まま、ここは1つオセロでもして落ち着きませんか?」


 古泉、オマエどんだけオセロ好きなんだよ? いつもオレに負けてるのに。


「それよりも、よ!キョンは一体何してたのよ?」

「オレはその……」


 まさかオレとオマエの正体について考えてました!なんて言えるわけねぇよ。

 ちらっと古泉と朝比奈さんの方を盗み見ると「(ぶんぶん)」と首を横に振っていた。


「その? 何?」


 グイっと、オレの顔の目の前にハルヒの顔が近づく。


「近い近い!ハルヒ顔近づけすぎだ!」

「だ、だったら早く言いなさいよ!(照)」


 と少し照れながらのハルヒ。


 照れてるコイツがカワイイとか思ったのはぜったい秘密だからな!


「あ~その…………ネット小説書いてたんだわ」


 ま、マズイ! 正直にこんなこと言うとハルヒが興味をしめ……


「何なに!? アンタが小説書いたの! なんか面白そうね! どれどれ私にも読ませなさい!」


 この作品が書かれたオレのスマホを無理矢理奪い取ろうとするハルヒ。


「わぁ~暴れるなハルヒ! 当たってる! 当たってる!」


 今のオレにハルヒの柔らかい何かを堪能している余裕はない!


「いいじゃないのアンタが書いた小説読むくらい! どうせロクなもんじゃないんでしょう?

 別に減るモノじゃないでしょが!……どうせだったら角川さんに応募して賞金をがっぽりもらいましょうよ!ね! いアイデアでしょ♪」


 満面の笑みで悪魔な発言しやがるハルヒ。


このままだと下手すりゃ、例の力を使ってまた何か面倒事をおっぱじめるに違いない!


「おい古泉!いや、この際朝比奈さんでもいい!ハルヒのヤツをなんとかしてくれ!」


 やれやれと両手を広げ古泉が、そして床に座り込んでいた朝比奈さんもオレのことを助けようとする。たぶんオレの必死さから、この小説がハルヒにとって『ヤバイモノ』だと感づいたのだろう。


「うわぁ!」

「きゃっ!」

「ふんっ! 古泉君とみくるちゃんで、この私を止められると思ってるのキョン!!」


 こんなとこで例のワガママパワー発動してんじゃねぇよ!


 ……と、そのとき何故か、右手に持っていたスマホの感触が消えた。


「あれ? どこいった? 落とした???」

「ちょっとキョン!何落としてんのよ!私の大事な賞金!!」


 応募すらしてないのに、なんでもう賞金もらった感出してんだ?あと落としたのはオレのスマホだぞ!オマエの所有権は1ミリたりともない!

 床に落としたのか? と探そうとしたら、こちらをじっと見ている長門がすぐ傍に立っていた。


「(じぃ~~~~)」

「うわぁぁ!……って何だ長門か?いつからいたんだ?」

「…………(ぽつり)最初からここにいた」


 おい長門、またエラー出てんぞ。大丈夫なのかオマエ?


「おっ!ユキナイス♪早くそれをこっちに渡しなさい!」


 長門がオレのスマホを盗ったのか?


「な、長門。長門はオレの味方だよな? そ、それをオレに返してくれるよな?な?」


 だが長門は応えず、オレのスマホを持ったまま、オレとハルヒのことを「じぃ~~~~」っと見つめていた。


 そして、オレたちから視線をズラすと、オレのネット小説が書かれてるスマホを見つめていた。


「ゆ、ユキ?」

「長門?」


 ハルヒもオレもぴたっと静止し、そんな長門のおかしな行動に気づいた。


「…………興味深い」


 と、ぽつりと一言。


 一体何が興味深いんだ? スマホか? だったらあとでオレが買ってやる! も、もしかして中身小説がか?


「へぇ~~~、あの・・いつも無口で有名なユキが興味を惹くくらいの小説なの? これはもうきっとノーベル平和賞ものね!」


 一体全体、どこに平和があるってんだ? それに小説なら『ノーベル文学賞』だぞ。


 そんなことを考えてると、長門は何かを操作し始めた。


(ゆ、指が早くて追いつけん!?)


「な、長門……いま何したんだ?」

「…………」


 だが、長門は応えなかった。


「な、長門さん?」

「……カクヨムに応募しておいた」


 と、ぽつり。


 おーいおいおいおい! ちょっとまてーい! そこはもしかしなくても……。


「確かネット小説のメッカだったと記憶してますが」


 そんな説明はいらんぞ古泉!


「はわわわ~、わ、私も全国の人に見られちゃうんですかぁ~」


 いえ、朝比奈さん。ネットなので『世界で』です。


「ったく~ユキなにしてんのよ! それじゃあ、私の賞金が手に入らないじゃない! 角川さんに応募しないと!!」


 だからオマエの金じゃねぇっての!……あとカクヨムも角川さんだぞ。


「あっ……」

「な、長門どうした!?」


 あ、あの長門が驚くなんてよっぽどのことだぞ!


「どうしたのよユキ?」

「…………、間違えた」


 長門さん! 一体何を間違えたのでしょうか? 色んな意味ですっげぇー気になる!


「もうじれったいわね!貸しなさいよユキ!」


 そういうや否や、ハルヒは長門が持っていたオレのスマホを奪い取った。


「ま、まずい!」


 オレはその現実から背けるように、あさっての方を向き、ぎゅっと目を瞑った。


「…………」

「…………」


 あれ? 何も起こらないぞ?


 少しずつ目を開けると、ハルヒがスマホの画面を見たまま固まっていた。


(とうとう自分が何者なのか知らちまったか……)


 オレは済まなそうに、古泉と朝比奈さんの方を見た。


 古泉も朝比奈さんも、これは仕方なかったという表情をしていた。

 もしくはこれから起きるであろう出来事に絶望しているのかもしれない。


 あ~世界中のみんなすまねぇ。オレのせいだわ。責めるならオレを……


「ちょっとユキ! これは一体どうゆうことなの!?」


 何故かハルヒが長門に憤慨ふんがいしていた。


「いや、ハルヒ悪いのはオレで長門を責めるの……」

「キョン!これ見なさい!」

「いってぇな!!」


 ハルヒがオレの目の前に、いや、顔面にスマホの画面を当ててきやがった。


「いいから早く見ろ!!」


 そう急かされ文句も言えず、痛い顔を擦りながらハルヒが示すスマホの画面に注目した。


「……ってなんだこりゃあ!!」

「!!」

「ひぅ」


 オレの驚いた声に古泉も朝比奈さんも驚いた。


 だってよ。これだぜ……



「本文は保存されずに消去されました。またのご利用をお待ちしてます。」



 なんという奇跡か!長門の操作ミスによって、世界は救われた。


「ちょっとユキどうしてくれんのよ!? せっかくの私のノーベル平和賞が!」


 だから、文学賞だっての。あとだからオマエのじゃないねぇー、っての。


 そんな最中、ハルヒに怒られる長門がちらっとオレの方を見た。


「(ふふっ)」


 長門が笑った!?……ようにオレには見えた。


 さっきの操作ミスはわざとだったんだな! 長門!やっぱりオマエが1番頼りになる!


「そ、そうだわ!キョン! 同じのを書きなさい!」

「はぁ!? む、無理だって」

「なんで無理なのよ!あんたが書いたんでしょうが!!」

「いや、書きながら考えてたから……その、内容覚えてなくて」

「あ~もう、なんでアンタは頭が悪いのよ!」

「うっせーよ! オレの頭が悪いのはオレの勝手だろう!」

「あ~もう、せっかくユキが関心を示すくらいの小説だったのに!?」


 とハルヒは怒りを表すかのように地団駄じたんだを踏む。


「まぁまぁいいじゃありませんか。小説ならまた書けば」


 ねぇ? と、オレの方にウインクをする古泉。……オレに男色趣味はない!(断言)


「別なモノじゃダメなのよ古泉君! ユキが興味を示すモノが必要なの! ね! ユキ!」


 長門はオレの方をまた『じぃ~~~』っと見つめ、


「………………(コクン)」


 と、長い沈黙の後にハルヒの問いに頷いた。


「ほらね!ユキがこう言ってるのよ! これはもう1度書くしかないわよキョン!」

「だから無理だっての。そんなに言うならハルヒ、オマエが書けよ!」

「嫌よ。大体何書けっての?」


 そんなもん知らねぇよ。何か適当に書いとけよ。


「あのぉ~……」


 と、これまであまり喋っていなかった朝比奈さんが、おずおず右手を挙げその存在をアピールしている。


「みくるちゃん何かいアイデアでもあるの?」

「れ、恋愛小説なんかはどうでしょう? わ、私も好きでよく読むし」


 朝比奈さんが恋愛小説!?…………何か1シーン捲るごとにあわあわしてそうなイメージがあるんですが。


「あ、あたしが恋愛小説!? な、な、なんで団長であるあたしが恋愛小説なんか書かなきゃならないのよみくるちゃん!!」


 朝比奈さんの発言に酷く動揺しているハルヒ。


 コイツ色恋沙汰が苦手なのか?


「う~ん……それは良いアイデアかもしれせんね」

「(コクリ)」


 古泉も長門も朝比奈さんの提案に賛同する。


「古泉君とユキまで!?……き、キョン! あんたはどうなの!?」


 どう? とは何を指してんだ?


「あ、あたしが、恋愛小説を書くことに決まってるじゃない! ば、ばっかじゃないの!(照)」


 照れてるハルヒがカワイイやつだ。


「いいんじゃないか恋愛小説。ハルヒお前ならそんなもん簡単に書けるだろ?」


 そんなオレの言葉にハルヒは、俯き顔が赤くなったが何かを決心し、


「よし! そんなに言うならこのあたしが書いてやるわよっ! まぁこのあたしにかかれば、涼宮賞はあたしのモノね!」


 何で自分の名前である涼宮の賞を早くも作ってんだ? 芥川賞や直木賞的ポジションを狙ってるのか? 

 そんなことを考えていると、ハルヒは例の赤い腕章に「超小説家」と黒いマジックで大きく書き、左腕に通した。


「さぁ書いて書いて書きまくってやるわよぉ~♪」

「そうだ! どうせならみんなのことを書きましょうか♪」


 おいおい、なんだか最後の最後に不安なことを言い始めたぞこの大作家先生は!?


「うーん、と……ユキが宇宙人で~」

「!」

「みくるちゃんが未来人!」

「えぅ><」

「古泉君が超能力者にして」

「はははっ」


 三者三様ごらんの表情。これが文字だけの小説なのが実に残念だ。


「なあ、ハルヒ。その小説とやらには、ちゃんとオレも出てくるんだろうな?」

「当たり前でしょ! 逃がさないわよキョン……あんたは『主人公』よ!」

「オレが主人公ぉ~? じゃあ、……オマエは何の役なんだ?」

「あたし? そんなの決まってんでしょうが!! あたしは……『メインヒロイン』よ!」


 満面の笑みでハルヒは嬉しそうにそう叫んだ。



ハルヒコイツがいる限り、オレは『ふつうの人間』だろうが、『異世界人』だろうが『主人公』だろうが何にでもなってやるさ。コイツが『それ』を望む限り。



fin.

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