第15話 ある宮廷魔法使いの受難(独白)

 はぁ、国王様も何を考えているのかなぁ。総合医療センターは結構だけど、魔法医と蘇生術士を一緒にするというのは常識ではありえないんだけど。

 魔法医からしたら自分の腕に自信がないと見なされかねないし、そもそも魔法医と蘇生術士は仲が悪いというのは常識なんだけどなぁ。名医と呼ばれる魔法医は全て当たったけれど、やっぱりアウト。

 あの「死体姫」と共に働くといったら、言葉で断られるのはまだ良い方で、水をぶっかけられたり岩塩を投げつけられたりと散々だ。これでも、いちおうは王宮魔道師の1人なのに、なんでこんなことしてるんだか……。大体、あの「死体姫」が悪いんだよな。蘇生術なんて気持ち悪いもの使うから……。


 全敗かぁ。片っ端から街の病院や医院を当たってみたけれど、やはりだめ。でも、国王様からの命なので「見つかりませんでした。あはは」では済まされない。ヤブでもなんでも魔法医を掴まえなきゃならないんだけど……。あれ、気がつけば、昼ご飯も食べずに街壁の近くか……。この辺りはあまり治安が良くない貧困地域だし、こんな場所に医者などいるのか? でももうここしか残っていない、行くしかないか。


 あれ、ボロボロになった看板にはっきりと「医者」と書かれた看板があるぞ。ダメ元でその建物に入ってみよう。……なんだこれ? 中はあちこちにホルマリン漬けの臓器の入った円筒形の水槽があるし、いよいよ怪しい感じなんだけど。生きて帰れるかな。これ。

 おっと、奥から誰何の声がかかった。えっ? どの臓器が欲しい?? 違う、そんな物はいらない。というか、ここはそんな商売をしているのか。違法だぞ!!でも、 喧嘩売るのも怖いんで、とりあえず逃げよう。


 はぁ、ビックリした。でも探さねば……。おっ、今度はまともそうな医院があった。頼むぞ本当に。受付の人が声を掛けて来た。感じはいい。あとは……はぁ。また断られるだろうな。ああ、すいません。診察希望ではないのです。実は、今度城の近くに総合医療センターを作る計画がありまして、今魔法医を探しているのです。ええ、よろしければぜひ。ただ1つ、あの「死体姫」も常駐するのです。はい、お手を煩わせました……はぃ? 今なんて仰いました? 承知した?? なんで? はぁ、蘇生術のスペシャリストの腕を見たい。はぁ、変わっていますね。よく言われる……なるほど。で、失礼ですが、お名前を……アリウド・ガリレイ先生ですね……。ん? ああ!? あのご高名な!! なぜここで?? 気まぐれ……はぁ。では、雇用契約なのですが……。


 よし、やっと任務完了だよ。あとは帰る……うぐっ!? 誰だ後頭部を思い切り殴ったヤツ!? ぐは!? し、死体姫、そ、蘇生……してくれるかな……。

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