第9話

「倫理的にもどうかと思うし、今すぐじゃなくていいから、人類の未来のために俺と子供を作ってください!」


俺の一言に5人は一瞬沈黙する。そして、




「えっー!!!」




5人の驚くような声が部屋全体にどよめいた。




「あのそれって、プロポーズじゃ・・・」


綾乃ちゃんが俺に言う。


「清原さん、いい人だと思ったのにちょっと見損なったわ」


和恵ちゃんが俺に言う。


「だから、今すぐじゃなくてもいいから・・・」


俺の必死の弁解は通じていないようだ。しかし、


「でもまぁ・・・清原くんがそんな嘘をつくとは思えないし、よかったら私の友達を紹介するわ」


優奈さんがそう言う。


「できることなら私も協力するわ。私と子供作ってもいいんだよ?」


有紗さんもそう言ってくれた。


「ありがとうございます」


俺は2人にお礼を言った。その後、平野さんに俺が今女の子5人と生活していることを伝えた。平野さんは、「なんなら今生活している女の子と子作りすればいいんじゃないか?みんな君と世代が近いそうだし、キャンプの女の子を紹介する必要も省けたわ」と言った。




それから数日が経った8月10日は綾乃ちゃんの誕生日。俺たち5人は綾乃ちゃんにそれぞれ誕生日プレゼントを送った。俺は綾乃ちゃんに似合っているだろうと思って買った麦わら帽子をプレゼントした。綾乃ちゃんは、「皆さん本当にありがとうございます!」と言ってくれた。




さらに数日後、俺は久しぶりに東京へ戻った。どうやらお盆休みの時期に、未感染者の男性を集めて説明会を行うらしい。会場として書かれた場所は、俺が1ヶ月前まで生活していたドーム球場跡・・・もとい集団キャンプ場だった。この1年弱でキャンプ場も相当治安が悪くなった。ウイルスの終息宣言後、東京への人口流入が急激に増えた。そして、このキャンプ場も1万人を超える人間が生活するようになり、キャパもとうとう限界に達した。最近は絶対安全と言われていたキャンプ場内でも自分が生き残るためなのか、強盗と殺人が続発するという有様だ。そのせいか、俺が東京から出た間に、キャンプ場には銃を持った警備員が配置されるようになっていた。


俺はキャンプ場にいた警備員に案内されて、会場である会議室に入った。会議室には既に10人程度の男性が座っていた。


「君が清原くんか。平野さんから話は聞いてるよ。これから説明会を受けるのはみんな、君と同じウイルス未感染者なんだ。もっとも全員揃ったわけではないけどね」


と説明会の担当者である渡辺わたなべという中年医師が俺に言った。そして、その説明会はほどなくして始まった。説明会の内容はもっとも、以前平野さんが言ってたことの繰り返しだったので省略する。そして最後に、この集団キャンプ場で生活している女の子の紹介があった。希望があればすぐ会ってくれるらしい。もっとも俺はその女の子の紹介を受け流したが。




説明会が午後3時30分開始だったので、説明会が終わった頃にはもう夕方の5時になろうとしていた。とりあえず今日はどこに泊まろうか。キャンプ場は以前より安全になったとはいえ、満室で泊まれないという。結局、俺は渡辺さんの紹介で、市ヶ谷にある別の集団キャンプ場に泊まった。ここは銃を持った警備員が常駐している上、食糧の備蓄や地下シェルターがあり、日本一安全な集団キャンプ場らしい。




俺はキャンプ場内にある食堂で夕食を取り、その後風呂へ入った。このキャンプ場の浴室はドーム球場の浴室とは違ってかなり簡素な作りだった。そして俺はテントに入りそろそろ眠りにつこうと思った時、




「突然の話ですみませんが、清原幸一さんですよね?」


「秋山有紗さんと大久保綾乃さんをご存知ですか?」




俺と歳が近いであろう2人組の女の子がテントの中に入ってきた。

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