第5話

共同生活3日目、俺は朝からリヤカーを担いで近所のショッピングモールに向かった。このショッピングモールは小さいながらも川沿いにあり、運搬用のボートが毎日のようににやって来る。そのため、食料・調味料・飲料水・化粧品・医薬品などの調達が定期的にあるという。




「塩と砂糖、醤油が足りなくなったから今日中に調達して!」




俺は今朝、有紗さんからそう言われた。調達しなければならないのは仕方ないのだが、どうやって交渉すればいいのか・・・


ショッピングモールでは、数十人が列を作っていた。しかし、通貨がほとんど流通しておらず物々交換が主流の現在、どうやって買い物をするのか。政府が機能していない以上、配給制は不可能だ。


結局、特に金銭や物品の要求はなく調味料の調達は完了した。とはいえ、調味料を6人分用意しなければならないから相当の荷物だ。リヤカーがないととても運べない。




そして昼食前に帰宅。今日の食事当番は有紗さんだ。どうやら食事は5人がローテーションを組んで作っているらしい。他の4人も今日はちゃんといる。どうやら午前中は水を汲んだり、畑仕事をしていたらしい。


「まぁあそこのショッピングモール、どう物を仕入れているかはわからないけど、金の要求や物々交換の必要がなく生活用品が入るのは事実だしねー」


と優奈さんは言う。そして俺は有紗さんにこう言った。


「そういえば昨日、私立学校は学費が高いと言ってましたよね?そして塾の報酬も結構貰えると。それはつまり、通貨が流通していることになるのでは?」


それに対して有紗さんは、


「確かに。通貨は流通しているわ。戦争で大半が消失したけど。あと、自分で通貨を作っている人もいるわ。戦争とウイルスの流行で法律も存在しなくなったから作り放題。ただそれらは種類が多いうえに非公式の通貨だから使えない店が多いらしいよ。だから物々交換が主流になったんじゃないかなぁ」


と塾の報酬で貰ったという1万円札を見せながら言ってくれた。


「なるほど・・・」


俺はそう呟いた。




昼食後は、6人で川沿いの更地へ向かった。そこには少し広くて深い穴がいくつかあった。


「もう7月だからね、プールを開業させようと思うの。後は水を入れるだけ」


そう優奈さんが言った。この場所は元々市民プールだったらしい。しかし戦争の悪化で数年前に閉鎖され、その後は放置状態。結局、共同生活を始めた5人が夏場の小遣い稼ぎのため、最近まできれいに清掃し続けたそうだ。


「少し開業時期が遅くなったけど、今年はまぁ仕方ないかな。それより清原くん、監視員頼むわね。明後日オープンするんだから」


優奈さんは俺にこんなことを言った。この日は川から汲んだ水をプールに使える様、綺麗にする作業をした。人口減少で川の水は多少綺麗になったが、それでも都市部はまだ汚い範囲だという。大量の水を川から汲み上げ、綺麗にした水を水槽に入れるため作業は大がかりだ。




作業は夕方まで続いた。明日はその綺麗にした水をプールの水槽に入れる作業がある。そして明後日はオープン当日だ。


帰宅後はまず俺が風呂の準備をし、そのまま風呂に入る。その間5人は夕食の準備。そして俺が風呂から出た時には夕食の準備が終わり、食事の時間だ。


食事中、俺は優奈さんにある質問をした。


「ちょっと質問があるんですけど、5人はいつどうやって知り合ったんですか?」


すると、優奈さんはこう言った。


「半年くらい前かな、ちょうどウイルスが終息した頃」


俺は固唾を飲んで優奈さんの話を聞く。


「私たちは元々住んでいるところがみんな違っていたの。私と和恵ちゃんとカレンちゃんは元から名古屋市内に住んでたけど、住んでいる地域はバラバラだった。有紗と綾乃ちゃんに至っては東京に住んでいたからね。清原くん同様、みんな戦争やウイルスで家族親族全員亡くしたのよ。5人が集まるまではみんな各自で暮らしていたわ」




俺は一瞬息を止めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る