第4話
翌日、俺は優奈さんが運転する車で岐阜へ向かっていた。目的はそう、卵と乳製品を取りに行くためだ。
「・・・車運転して大丈夫なんですか?ガソリンは貴重品ですよ」
俺は優奈さんにこう言った。
「あ、これ電気で走るタイプの自動車だから。自家発電で充電してなおかつ、予備のバッテリーも同時に充電しているから一晩充電したら丸一日運転できるわ」
優奈さんはそう即答した。
そして1時間半ほどで岐阜に到着。まず養鶏場に向かった。優奈さんは頻繁にこの養鶏場を訪れるらしく、養鶏場のおじさんからは「とうとう優奈ちゃんにも恋人ができたの?」と言われた。
「まさかこのまま卵貰うだけじゃないですよね?」と俺は優奈さんに言った。すると優奈さんは、「もちろん。でも1時間くらいの簡単な雑用だけでいいから。まぁ、本当は卵を貰う代わりに育てた野菜や発電した電気を向こうに売るんだけどね」と言った。物々交換か。
そんな感じで俺は養鶏場の清掃を手伝った。どうやらこの雑用で卵を貰えるらしい。
「優奈ちゃん、卵と鶏肉2週間分ね。今日から6人分になるから少し多く用意したよ」
と、養鶏場のおじさんから卵と鶏肉を貰った。俺と優奈さんは車中で朝用意した昼食を食べ、牧場へ向かう。どうやら優奈さんはこの牧場も頻繁に訪れているらしい。
牧場では小屋の清掃と乳絞りを手伝った。
「優奈ちゃん、いつも野菜と電気をありがとうね。じゃあこれ、牛乳とバターとチーズ2週間分ね。今日から6人分になるみたいだから少し多めに用意したよ」
と、牧場のおじさんから牛乳とバターとチーズを貰った。
家に戻る頃には夕方になっていた。家には有紗さん、和恵ちゃん、綾乃ちゃん、カレンちゃん、全員揃っていた。どうやら今日、有紗さんはマンションの2階にある学習塾で子供に勉強を教えていたらしい。和恵ちゃん、綾乃ちゃん、カレンちゃんはその学校で勉強をしていたという。
この数年、日本は大戦の混乱とウイルスの感染で人口が大幅に減少したため、学校そのものが機能しなくなった。そのため、これまで通り勉強をしたいという子供は自主的に開かれた私立学校や学習塾で勉強をするのだという。しかし私立学校は学費が高いので、大抵の子供は費用が無料だったり安い学習塾を選ぶらしい。
「私は主に国語と英語、音楽と体育を教えているわ。報酬は結構貰える。この時代、教育は枯渇しているから勉強を教える人は貴重なのよ」
と有紗さんは言った。あと優奈さんも週3回程、この塾で日本史や政治・経済を教えているらしい。
夕食は定期的に貰っているお米と昨日貰った肉と魚、そして近所の畑で栽培している野菜だった。この時代にこれだけの食事を取れることは相当貴重なものだ。
夕食後の風呂はまず俺が入り、俺が出てからは残りの5人がそれぞれ2,3人で入ることになった。風呂から上がると俺は就寝の時間まで自分の部屋か居間にいる。この時代は娯楽がほとんどないので暇だ。
最後の人が風呂から上がると俺は程なくして自分の部屋に入り眠りにつく。こうして共同生活の2日目は更けていった。
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