第8話
いくつもの『びじゅつかん』を転々とした。
とある日いつも以上にたくさんの人が僕を訪れた。
その中に誰かを見つけた。
「華依くん」
僕を呼ぶ声がした。
誰なの、どの人
僕の頭は混乱した。
「おじさん、やっぱりこの絵はいつ見てもきれいだよ」
いつしかの少年はもう初めて見たときの悠君くらいまで成長してた。
それに、おじさんと呼ばれているのはその悠君みたいな雰囲気を持った人だった。
「この作品が綺麗だと、僕は言えなくなった。
俺が汚いのが分かったから、華依くんの綺麗なのを僕の記憶だけに
とどめようとした。なのに今は・・」
信じられないって顔で僕を前に男の子だった彼に色々話す。
おそらく、たまたま出会って仲良くなって僕の話題にでもなって
本当に自分の作品なのか確認しにきたのだろう。
「俺が『花と話す華』を見たのは三度目だけど、忘れられないでいたんだ。
だから今日またこの綺麗な絵を見れて嬉しい」
「僕だってそう思いたいくらいだよ・・ただ驚いてしまって・・」
そうだよね、自分が塗りつぶした作品が修復されたようによみがえっていて
大きな『びじゅつかん』に飾られているんだもんね。
「悠君、笑って。また綺麗だと言って」
僕の言葉は届くだろうか。
「でも、やっぱり綺麗だね。華依くんは僕の愛すべき末っ子だ。
何度諦めようと君に笑いかけて楽しんで絵を描けたのは、君の綺麗さ故だから」
微笑んだ悠君の顔は僕なんかより綺麗で
辺り一面花が咲いたんじゃないかと錯覚してしまうものだった。
また話せたようでうれしかった。
「悠君、もっと言って・・綺麗って」
溢れ出すため込んできた思い。
「良かった、また会えて。もう満足、帰ろうか」
でも、もう声は届いていないんだね。
ある絵画は生きている。 なきゃ @nakya_deseo
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