第7話

―――――


今までの経験にない足音の多さ。

視線の多さ、優雅な音の連なり。




「作品名『花と話す華』

 この作品を作った作者は不明です。」



女性の声が僕を語る。



「愛らしい花に囲まれた青年のどこか悲し気な微笑みが

花の可愛らしさや明るさを際立たせた絵で、その青年の美しさもあって

とても綺麗だと好評な作品です」



誇らしげ女性の顔は僕の求めていたものではなかった。

けど、



「あぁ、確かに綺麗だ」


「この青年は実在するのか?」


「この作品の意図をもっと深く知りたい」



何人もの視線は柔らかく、何人かは鋭く

でも口々に褒めてくれた。


笑顔になってくれている。








あぁ、気持ちいいな。

僕の求めていた『笑顔』






「ねぇママー、この男の子今笑ったよー」


「元々笑ってるわよ」


「違うよ!ほんとに笑った!」


「こら、静かにしなさい・・」


「・・うー・・」




「有難う、男の子。嬉しくて笑うのは久しぶりなんだ」



「えっ・・誰・・」




ちっちゃい子は怖いな、声が届いてしまったようだ。

黙ろう。






僕は作品で、華依なんて名前じゃなくて『花と話す華』

悠君とはもう笑いあえないけど、誰かを笑顔にすることは出来る。

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