第5話

僕の世界が揺れてから

悠君が僕の前に姿を現すことはなかった。

三百日はたったんじゃないか、そう思えるほどだった。





「なんで会いに来てくれないの、綺麗だと言ってよ。

何も見えないよ、自分すら見えないよ」





僕が、何かを求めることは罪なのだろうか。

君を求めてしまった僕への罰なのだろうか。



「ねぇ、悠君

 君に綺麗と言われた僕は実は汚かったのか?」




一人で呟いて、一人でまた悩みこむ。

こんなんだから悠君は僕に会いに来てくれないのだろうか。


僕から会いに行けば、なんて何度思ったことか。

会いにいけないものは仕方ないじゃないかと割り切れない、

だからとはいえあきらめるわけにはいかないんだ。







「僕の求めたものは悠君じゃないのかもしれない」






ハッとなった、悠君ばかりの毎日で愛が湧いたのかもしれない。

ただ、もはや悠君の顔だって形だってウロ覚えなんだから。


別に君じゃなくても良いんじゃないか・・



思わず笑みが浮かんでしまう。

今までにないくらい口角が上がる。

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