第3話

伝わらぬ思いを胸にずっと秘めるほど

僕は人間じゃあない。



「華依くん、今日は続きを描ける気がしないんだ…」



筆を持って1時間。

悠君は筆を持つだけで色をくれなかった。

深く息をついて、落ち込んだ顔で微笑んだ。



「こんな日もあるんだよ…我儘でごめん」



そう言ってキャンパスに綺麗な指を滑らす。

そのキャンパスは悠君と僕を隔離する壁だった、だから悠君といれない僕に価値なんてないからだと思った。

大切な悠君を、悲しい顔にさせる僕なんていらない。




価値がないから、この森に隔離されたんだ。






無力な僕だ。






悠君…君を元気にできたら、君は機嫌良さそうな顔でルンルンと鼻歌交じりに色をくれたのかな。






____僕が欲しいものの名前は何?






それすらも分からないだなんて、やっぱり僕は…



「作られたもの……そう」





悠君が産んでくれた。

それには感謝している…けど、

僕は悠君と一緒の存在だ。




僕は、人間なんだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る