第2話
僕は悠(ゆう)さんの作品の中で一番の末っ子らしい。
たまに他の誰かの話をしながら筆を滑らせてくれた。
「この間、部屋の片付けをしていたらね
僕の処女作を見つけたんだ。
『華乃女』と言うんだ、綺麗だろ?
僕の初恋の人をイメージして描いたからね、愛情も籠ってるよ…うん」
悠さんは好んで『かのじょ』と呼んでいたが作品名の読み仮名は個人で決めてくれて構わないと言っていた。
『かのじょ』と呼ぼうが『はなのおんな』と呼ぼうと。
確かに綺麗な女性だと思った。
強さの中にある柔らかな緋色は花の静かな美しさを際立てていて、それでいて白い肌も目立たせていた。
「『華乃女』はね、僕が15歳の頃に描いたものなんだよ。美術部に入って初めて描いた絵だった。
運良くなんらかの展示会で展示されたんだけどね、下手だって言われちゃったんだー…誰よりも自分が分かってるっての〜ってね」
自分にクスリと笑うかのような悠さんの姿に胸が痛んだ。
俺は無力だ。
この時から僕は、誰にも文句の言われない凄い人を目指したくなった。
ただ単純に素晴らしい作品でいたい、と。
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