雨に消える

篝:ものは試しだ。行ってみるか?


碕宮:……『雨の中』をか?


篝 :……分かったよ。

明日は晴れるみたいだし。

明日行こうぜ?

俺も興味あるし。

それじゃ、『雨の中』を帰りますか。


ナレ:二人に別れを告げ、篝様は帰って行くのでごさいます。


碕宮:……桜か。


硯 :……妖であろうとなかろうと、若には関係ないのでございましょう?


碕宮:……ああ。


ナレ:しかしながら、二人は何も知りませんでした。

下見の為に町人に話を聞いて、目的地に向かった篝様。

次の日、お現れにならなかったのでございます。


硯 :……篝様、遅いですね。


碕宮:アイツのことだ。

女の尻でも追い掛けて忘れてるんじゃないか?


硯 :……十分、考えられまする。

本当に仕様のない方ですこと。


碕宮:そんなこと言って……。

本当はヤツのこと、満更でもないんだろ?


硯 :な、何を仰っておられるやら!

わたくしにはサッパリでごさいます!


ナレ:硯は顔を赤くし、うつ向いてしまいます。

そんな二人の元に現れた者がおりました。


奏 :お、恐れながら失礼致しまする!

あああ……!


ナレ:来るや否や、裾を踏み転ぶ娘。


硯 :……あ。あら奏。

久しいですね。大丈夫ですか?


奏 :お、お久しぶりです、硯。

大丈夫ですぅ……。


ナレ:二人は幼馴染みでございます。

彼女の慌てぶりを見て、不審に思うのでございました。


硯 :……篝様に何か?


奏 :ええ!若様もお聞き下さいませ!

うちの若、篝様が昨日よりお帰りにならないのでございます!


碕宮:……篝が?どういうことだ?

昨日、そちらの屋敷から出るとき何か申して無かったか?


奏 :そ、そういえば……。

『桜の屋敷』がどうとか仰っておられました!


碕宮:……それは俺たちも聞いた。

まさか……!


硯:……事前準備をされて行方不明、でございますか?


碕宮:アイツはいつも用意周到だからな。

下見にでも行ったんだろう……。

仕方ない、硯!


硯 :は!支度を!


ナレ:奏はよく分からないようで、口を開けたままほうけております。

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