紫陽花の季節に
ナレ:時は平安。
ある屋敷に一年中咲き誇る桜があると噂が流れました。
それはきっと妖の屋敷だろうと言われておりました。
碕宮:今日も暑いな。
硯 :梅雨入りしました故、仕方なきことでございますよ、若。
ナレ:紫陽花の綺麗な季節。
とある屋敷の縁側で若君と侍従がまったりとしておりました。
そこに雰囲気を壊す輩が参りました。
篝 :よぉ!色男!
雨見て風流気取ってんのか?
碕宮:篝……、おまえは気分が滅入ることはないのか?
篝 :ん~そうだなぁ。女にフラレた時?
硯 :……女タラシ。
篝 :硯のお嬢ちゃん、いつもきついねぇ。
ほら、俺ってイケメンじゃん?
モテるから、選べないわけよ~分かる?
硯 :……変態。
碕宮:救いようのない馬鹿だな。
だから硯に邪険にされるんだ。
篝 :言ってくれるじゃねぇか。
おまえこそ、モテるクセに相手にしないのはどうよ?
ナレ:硯に睨まれる篝様。
篝 :あ~悪かったって!
碕宮:……別に女が苦手なワケじゃない。
昔惚れた女がいたから応えられないだけだ……。
篝 :へ?!初めて聞いたぜ?!
どんな女よ?!昔って、ガキの頃じゃねぇの?
硯 :……色恋に年齢など、関係ないのですよ。
篝 :まぁなぁ……、硯のお嬢ちゃんはいいのかい?
ご主人様に想い人がいるんだぜ?
硯 :……想いを寄せられる姫君がいることは素敵なことと存じます。
篝 :……硯のお嬢ちゃん、いい女過ぎるぜ。
硯 :……まぁ、褒めていないようでございますが。
ありがとうございまする。
忠誠と恋愛は別物でございますから……。
碕宮:そういうことだ。
女に現(うつつ)抜かしてると婚期逃すぞ、女の敵。
篝 :……冷たくねぇ?
さっさと帰れってか?
綺麗な紫陽花鑑賞に来た俺に?
硯 :……最初からそう仰ればよろしいかと思われます。
ナレ:この男、藤原の末子の為かなりの風来坊でございました。
継ぐこともない為にフラフラと。
宮廷にて知り合った同い年の位のない帝の末子・碕宮様に出会い、まとわりついているのでごさいます。
早い話が二人には家系以外には取り柄のない者達なのでございました。
篝 :あのさぁ……何かねぇの?
お姫さんの特徴とかさ。
碕宮:……特徴か。
顔は朧げだがアレだ。
桜が舞っていた……。
その下で微笑む彼女が綺麗だった……。
篝 :……桜ねぇ。
桜?…そういや、町で聞いた話が有ったな。
一年中咲き誇る桜が舞う屋敷があるって。
ま、妖の屋敷だろうってさ。
碕宮:……桜の屋敷か。
俺が彼女に逢ったのは……、春……では無かったような。
この屋敷は……少し暑かった?
おかしいな……。
硯 :……今の時期やもしれぬと仰られますか?若。
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