悠斗と渚
日差しが強い。目が眩む。頭がふらつく。汗が止めどなく滲み、滴り落ちていく。
午前11時。
「お待たせー。ちゃんと来ていたね、えらいえらい」
白いワンピースに大きな麦わら帽子といった出で立ちで、ぴょこぴょこと飛び跳ねて悠斗の頭を撫でる。手につけた赤い花のようなシュシュが揺れる。
身長差は約30センチ。悠斗が175センチに対して彼女は145センチと小柄だった。
「おはよう、
「そりゃないでしょ、きみぃ」
白いスポーツサンダルで背中を蹴られる。
「何、なに? そんなに見とれちゃって、どうしたの? まぁ、わたしかわいいからね!」
「自分で言うなんてよっぽど君はアレだね。いや、相変わらず胸ないなーって見てただけ」
閃光の蹴りが股間めがけて飛んできた。かろうじて手の甲で防御したが、激痛が走る。皮が剥け、血がにじむ。
「いたたた。怪我したから帰る」
「いいからいくよ、もう」
小柄な割にすごい力だ。悠斗はずるずると引きずられていく。
「それで、どこに行くの?」
「うーん、隣町までちょっとお買い物に」
隣町。それを聞いて一瞬硬直する。
「大丈夫なの? 今、隣町は危ないんじゃ」
「だいじょーぶ。人通りが多いところだし、明るいうちに帰るからー。それに何かあったら悠斗が守ってくれるんでしょ?」
「自信ないなぁ。僕文系で体力ないしね」
「不正解。そこは命がけでも君を守るよ、でしょ。好感度あがんないよ、そんなんじゃ」
別にいいよ、あがらなくても。
悠斗は渚に聞こえないように小さくため息を吐き、その小さな背中について歩いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます