第8話:お嬢様のお戯れは容赦がございません

 場所は変わって私の自室にあるベッド。

 その上で私たちは男女の営みではなく、女の子同士の戯れをしようとしているところです。シャルロッテがベッドで仰向に受け身の状態になって相方を待ち構えております。

 そして攻めの女は私。彼女の腰の上でまたがっております。

 シャルロッテを見つめる。頬は紅色の鮮やかな桜色に染まっており、口元からは白色の吐息が、ゆったりと漏れております。目は甘くとろけており、目尻には粒の涙が溜まっております。

 股から伝わる彼女の暖かな温もり。外の寒さには少し物足りないものですわね。

 このいたいけな美女を快楽で屈服させたいわ。


「お、お嬢様……私に何をされるおつもりなのですか……?」

「ふふっ、まぁ見てなさいって。ほら、私に背中を向けなさいな」

「ふぇ? なぜですか?」

「さぁ?」

「うぅ……意地悪しないでください……」

「言葉よりも身体で知った方がとても気持ちよくなれるからとでも言っておこうかしら。ふふっ」


 恥じらうシャルロッテに小悪魔の悪戯な眼差しでみつめます。

 その言葉を聞いて彼女は何を想像したのでしょう。頭からボンッ!という、まるで汽車の蒸気みたいに小さな爆発音を鳴らして、シャルロッテは胸を隠すように腕をクロスした後に手を肩に添えました。

 嫌なのかしら? と、思ったのですが、そうではなく、ただの彼女なりの恥ずかしさを現した仕草だったようですわね。


「うつ伏せになってちょうだい」

「はい……」


 彼女は首肯すると、私が腰を浮かしている間に寝返りをうって背中をさらけ出しました。私はお尻の上には乗らずに、すこし上のおへそに近いところで腰をおろします。

 シャルロッテは男を知らないのかしら?と、ふと興味が湧きました。純粋にただの好奇心です。

 私は思い出したくもないし言いたくもないわ。男が持つ邪な欲望と本性を知っているから。

 さて、彼女のどこを責めてみようかしらと思案をします。

 キス? それとも手で優しく愛撫? 考えるに連れて胸の奥底が疼いてドキドキしてしまいますわ。優越に満ちた嗜虐的でエキゾチックな快楽を感じてしまいます。

 私は枕元そばにあるサイドテーブルの上に置かれた小さなガラスの小瓶を手元へとたぐり寄せて指で摘まみ取り、瓶の栓を引き抜きます。

 ガラスの小瓶の中には、魅惑的な桜色の液体が詰め込まれております。瓶から部屋中に漂う芳醇な甘くて色気のある大人の香りが鼻腔をくすぐっております。


「この香りは……」

「あら、あなた知ってるのこれのこと?」

「……はい」


 少しの沈黙をおいて間を開けたシャルロッテはコクリと首肯をしました。そしてそのまま枕に顔を埋めてしまいます。この匂いを知っているならば話は早いですわね。


「そうよシャルロッテ。これは、あなたの為に用意しておいたとっておきの媚薬なの」

「知ってます……私がお嬢様のお部屋に行くたびにその媚薬を嗅ぎながら、お嬢様のお使いになられている枕の匂いを嗅いで自炊していますので……」

「……これ。かなり貴重な品物だから、誰にもばれないところにこっそり隠していた秘蔵のアイテムなんだけど……?」


 嘘。本当はただの香水入りの保湿ローション。色めいた気持ちでいる彼女には本当の媚薬と勘違いしているはず。心理的な責めで相手の心をつかむ。てか、この子は私の枕で何をしてくれているのよまったく。面倒だから突っ込むことはしないわ。


「……なるほどねぇ。それで、興味があったからつい使ってしまったのかしら?」

「い、いえっ!? 滅相もございません! わたくしシャルロッテはお嬢様のお持ち者を自分の欲望の為に使ったりはしておりません!! はっ!?」


 言っていることが矛盾しているわね。


「……なるほどねぇ。ふーん」

「うぅ、やらかしたよぉ……」

「そうね。盛大にやらかしたわね。おかげで質問するのが楽だわ。ありがとうシャルロッテうふふっ」

「ひんっ!? どうかお許しを!?」

「だめよ。許さないわ」

「ふぇぇ……」

「とりあえず逃げちゃだめよ? すこし待ってて頂戴」

「かしこまりましたお嬢様……うぅ……」


 私はベッドから降りて床の上に立ち上がり、そのまま近くの飾り棚に置かれた古めかしい蓄音機のところまで歩み寄りました。蓄音機の隣にずらりと並びレコードのパッケージを数枚ほど手で取り出して、いまの気分に合う曲を選別するようにして探します。


「これにしようかしら」


 目で選びましたレコードの中身を取出します。そして蓄音機に取り付けて電源を入れて回転させ、針を奥まで移動させました。

 曲はRed Army Choir: Korobeinikiです。ただし、音楽のみですわ。BGMレコードを音楽家に作らせた物を流しておりますのよ。歌手の声を来てしまうと、せっかくの戯れが楽しむことが出来ないのでつまらないですわ。

 最近はこれが私のお気に入りですの。前の世界ではやっていたEDMが懐かしいですわね。残念ながら、この世界には電子音で奏でる音楽なんていう最高の楽器は存在しません。たまに聞きたくなるあのテクノ調の音色やビート。ダブステ。それの曲調を思い出しただけで胸と心が躍り出しますわ。いま耳にしているこの曲もなかなにノリノリでいいですわね。

 ただ、ひとつ気になったのが、この曲が、この色濃く甘い空気に流すようなものなのかがといまさら選んでおいて後悔しております。あきらかにTPOに会わない選曲でしたわ。


「お嬢様。この曲は……」

「あら、ベッドで横になっていればいいのに。」

「私が貴族身分の時によく聞いていました曲だったので」

「へぇ、そうなの」


 シャルロッテはいつのまにか私の背後にたっていました。正面を向いていた私はそのまま彼女に抱き寄せられてしまいました。

 そして彼女は私の耳元に顔を近づけて甘い声で求めてきます。


「お願いです……焦らさないでくださいお嬢様……私、もう我慢の限界です……」

「甘えん坊なのね」

「はぃ……。私は恐れ多くもお嬢様の事をみて発情してしまう変態メイドです。どうか私にご慈悲を……」

「ふふ、そこまでいうのならやるしかないわね。いいわ、私をあのベッドまで連れて行きなさい」

「はい……喜んで……」


 満面の笑みを浮かべるシャルロッテは、私をすくい上げるように腕で抱え持ち、そしそのままお姫様抱っこでベッドまで運んでくれました。彼女の温かみが感じますわ。

 そして、ベッドに腰掛けるようにまるでお人形さんのようにして座らされました。

 シャルロッテはそれから、ベッドの上に仰向けになるようにして横になり、私に襲ってほしいと言わんばかりに両手を一杯に差し出してきました。


 もう、私は理性をかなぐり捨ててしまいました。


 私は勢いに任せて彼女の腰の上にまたがり、手にした保湿ローションを彼女のお腹に滑らすようにしてたらし込みました。彼女の甘い声色を聞きながら、そのローションを、まるでホットケーキにかけるシロップのようにふんだんに注ぎ込みました。彼女の肢体はもうヌルヌルにテカっております。


「あぁ、お、おじょうさま!! そっそこっ、いっいい!! あぁあん!! らめぇ!! あっ、何かきちゃう!? あっ!? ひぃやぁあああああああ!!」


 少しオーバー過ぎるわよまったくもう。反応に困ってしまいますわ。


 これはただのマッサージです。決して風俗的な商売をしておりませんわ。ただのじゃれ愛ですの。

 そう、これはただの女の子同士のお戯れ。だから女の子同士だからできるちょっと刺激的なプレイのマッサージをして差し上げておりますのよ。うふふ。こうすべすべのお尻と胸を手で揉みし抱くだけでも背徳的ですわね。








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