第6話 実技試験

筆記試験が終わると受験者は全員先ほど学園の門から見えた闘技場に案内された。

闘技場の中は、中央に広い正方形の戦闘フィールドがありその周りは観客席で囲まれていた。


「それじゃあ実技試験をはじめるわよ。」


エクシア先生がそう告げると受験者の緊張感が高まった。実技試験って一体何をやるんだ?ミルさんには筆記試験対策の勉強はしてもらったが実技試験に関しては何も聞いていなかった。


他の受験者は、これから行う内容を察しているのか顔つきが強張っていた。


「ルールは簡単私に一発攻撃を当てるか、当てられなくても私が見込みありだと判断したら合格。基本的には私の裁量で決まるけど文句は受け付けないわ」


実技試験の内容は思ったより単純だった。指定された魔法を使えとかじゃなくてマジ良かった〜そんなのだったら確実に落ちてただろうからな。俺が安堵していると受験者の1人から疑問の声が上がった。


「あの、先生の裁量で決まるって言ってましたけどそれじゃあ筆記試験は何だったんですか?」


そういえばそうだな。それだったら別に筆記試験は必要なかったとも言える


「そんなの決まってるでしょ。最低限の頭も無いようなやつはいくら実力があってもこの学園には必要ないってことよ。つまり、私がここで実力を認めて合格を出しても筆記試験がダメだったら落ちるから」


まあ、そりゃあそうか。でないも筆記試験をやる必要がないもんな。エクシア先生の回答を聞いて他の受験者も納得したように頷いていた。


「わかったら誰からでもいいからかかってきなさい。他の受験者は上の観客席に行っていなさい。観客席には魔法が届かないように結界が張ってあるから怪我の心配はないわ」


そう言うとエクシア先生は、フィールドの中央に歩いていってしまった。

受験者たちは誰から行くのかというのをお互い視線で牽制していた。

しばらくそのまま牽制していたのだがフィールドで待っていたエクシア先生が先に痺れを切らした


「いいからさっさときなさい!」


これ以上時間をかけると全員不合格にするぞと言わんばかりの形相で怒鳴るエクシア先生にビビっていると1人の女の子がフィールドに上がっていった。


あの女の子、筆記試験の時隣の席にいた子だ。肩のあたりまで伸びたブラウンの髪を左右に揺らしながらフィールドに立ち先生と向かい合うとその女の子は初めて声を出した


「あの…武器を使いたいんですが」


武器?魔法じゃなくて武器を使うのだろうか?そんな事を疑問に思っているとエクシア先生は


「そういえば説明し忘れてたわね。ちょっと待ってなさい」


そういってフィールドをおり選手の入場口の奥に走っていった。

しばらくすると先生は、何やら台を運んで戻ってきた。


「武器を使いたい場合はこの中から選ぶといい」


そういって運ばれてきた台を見るとその上には、片手剣や両手剣、弓、槍などの武器が並べられていた。


女の子はフィールドを降りてきて台の上を少し眺めると


「じゃあこれを」


そう言って片手剣を取ると再びフィールド上に戻っていった。


他の受験者たちは試験がはじまるので観客席に移動しだした。俺は移動する前に1つ先生にどうしても聞いておかなきゃいけない事があったのを思い出して質問した


「あの〜これって全力でやっても大丈夫なんですか?」


もし全力でやって先生に怪我をさせるのも申し訳ないと感じたので聞いたのだが


「そんな心配するだけ無駄よ。あなた達の攻撃はしっかり防ぐから加減をしようなんて考える必要ないわよ」


エクシア先生はそう言うと全身に魔力を漲らせた。可視化できるほどの魔力は俺たち受験者に圧倒的な威圧感を感じさせた。


「これでそんな心配無駄だとわかったでしょ」


確かにこれだけの魔力を纏っていたら攻撃なんて通りそうにない。つまりあの覆っている魔力に攻撃を当てられたら合格ってことか


「ありがとうございます。わかりました」


俺は礼を言うと観客席に向かった。



「では、1人目の実技試験をはじめる。名前は」


「ラメルです」


あの女の子はラメルと言うのか、家名はないのかそれとも名乗らなかっただけかは分からないが名前が分かっただけ良かったとしよう。お互い合格したら話してみたいな


「では、ラメルさん試験開始よ」


エクシア先生の開始の合図がとんだ瞬間、ラメルさんの右手が光ったように見えた直後姿が消えた。


正確には消えたわけではなく消えたように見えるほどのスピードで走りだしていた。ラメルさんが使っているのは自分の身体能力を上げる魔法のようだ。

両手で片手剣を掴み一瞬で先生に肉薄すると右から左へと剣を薙いだ。


俺はギリギリ目で捉えることが出来たが何が起こったのか分からない受験者は困惑していた。


捉えた!


あのスピードで不意を突かれては躱すことはできない


そう思っていたのだが、先生は剣が届く直前に身を引き攻撃を避けていた。


「うそ…」


流石に今のタイミングで避けられとは思っていなかったのかラメルさんも茫然としてしまっている。


「なるほど、身体強化魔法ね。なかなか速くて驚いたわ」


とてもそんな風には見えない余裕の表情でエクシア先生は言う。


「さあ、固まってないでかかってきなさい。」


その言葉で我に返ったのかラメルさんは再び先生に向かっていった。





「そこまで!」


エクシア先生が終了を告げるとラメルさんは悔しそうに俯いていた。

結局、ラメルさんは攻撃を当てることは出来なかったが


「ラメルさん、合格よ」


次いでエクシア先生の口から出た言葉に顔を上げた。


「どうして…」


一発も攻撃を当てられなかったのに合格になった理由が分からなかったのだろう思わず口から漏れたという感じだった


「それだけの身体強化魔法をまだ紋章を充分に扱えていないうちから使える人なんてそうそういないわよ。戦いのセンスもあるし合格点よ」


エクシア先生は、ラメルさんの評価をひと通り言い終えると


「さあ、次は誰!」


他の受験者もラメルさんの戦いを見て火がついたのか次々と先生の元に降りていった。



まあ、全員合格なんてことはなくラメルさんの次に受けた人は普通に不合格になり観客席で落ち込んでいた。


これ、合格でも不合格でも帰れないで最後まで見てるって相当辛いな…


そんな事を考えていたのだが他の人たちがどんどん下に降りて行ってしまうので元からの歓迎されてない雰囲気もあって完全に出遅れてしまった。


結局、俺の番は最後になってしまった。合格者はだいたい受験者の半分くらいか…


そんな事を考えながらフィールドに上がっていくと


「最後はあんた?」


エクシア先生は、今まで30人ほどいた受験者を相手に戦っていたというのに全く疲れた様子は見えない


「そうです。よろしくお願いします。」


フィールドに上がると先生の威圧感をより感じられたが修行の時のミルさん程ではなかったので何とか向き合える


エクシア先生とお互いの視線を交わすと


「名前は?」


「レイです」


全員共通の短いやり取りが行われると


「試験開始!」


先生の掛け声と共に俺の実技試験がはじまった













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黒の紋章使い UG @judv482

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