第5話 入学試験当日
試験当日
朝起きた時は天気も晴れ幸先が良さようだと感じていたのだが入学試験がはじまるまであと10分になったところでようやくミルさんが椅子から立ち上がり宣言した。
「それじゃあ王都に行くわよ」
俺は正直もう少し早く着いていたかったけどミルさんが動かなかったので仕方なく待っていたがソワソワしてしまって落ち着かなかった。
「はやく行こう」
この試験がはじまる前というのは何とも言えない緊張感が身を包んで何か行動をしてないと悪い事ばっかり頭に浮かんできてしまう
「最後に確認しておくけど、私との約束覚えているわよね」
スッと俺の目をみて話しかけてくるミルさん。その目は、約束を覚えているかの確認ではなくしっかり守ってくれるのかという不安が浮かんでいるのを俺が見ても感じられた
「大丈夫ですよ。暴走は絶対にしませんし、試験が終わったらネックレスにちゃんと合図を送りますから」
そう俺が返事を返すとミルさんはそれでもまだ少し心配そうな顔をしていたがそれを振り切るように頭を左右に振った後笑顔で
「わかってるならよし!じゃあ飛ぶから捕まりなさい」
満面の笑みで笑いかけてくれるミルさんに俺もつられて笑顔になってしまう
「はい!お願いします。」
俺がそう言うと目の前の景色が一瞬で変わった。
さっきまで見慣れたミルさんの自宅にいたのだが今は、建物と建物の間の細い路地みたいなところにいた
「この路地を出て右に曲がるとすぐに学園があるから入口でこれを見せなさい」
そう言ってミルさんが渡してきたのは俺の名前が書かれたカードだった。
「これは?」
このカードが何なのかわからかったのでミルさんに尋ねたらミルさんは呆れたように肩を竦めながら
「あんたの身分証に決まってるでしょ。それがないと試験受けられないからね」
そんな事考えたこともなかった。そうか試験を受けるためには俺がどこの誰か証明しなきゃいけないのか。
俺が今気づいた新事実にそう納得しているとそれが顔に出ていたのか苦笑したミルさんが
「わかったらさっさと行きなさい時間ないわよ」
そうだった飛ぶ前の時点で10分しかなかったのでゆっくりしているヒマはない。俺が慌てて路地を出て行こうとすると後ろから
「がんばりなさい!絶対合格してきなさいよ〜」
そんはミルさんの激励を背中に受けた俺は学園まで走りだした
学園の前に着き中を覗くと、そこには本当に街の中なのかと疑うほど広い空間が広がっていた。入口から見ただけでも校舎らしき建物と闘技場らしきものがあるのがわかった
目の前の光景に圧倒されて立ち尽くしていたけれどそこでふと我に返り慌てて門をくぐった
学園の中に入ると入学試験を受ける人用に案内の看板が立てられていたのでそれに従って校舎の中を歩いていると受付らしき人が机の前に座っていた。見た所他の受験者はいないもう部屋の中に集まっているのだろう。そんな事を考えながら近づいていくと向こうも気づいたのかこちらを見てきた。
「ここが受付ですか?」
確認のために一応聞いたのだがその返事を聞く前に俺は気づいた。この目の前に座る男の侮蔑の篭った視線に
「そうだ。身分証を見せろ」
必要最低限の会話しかするつもりはない。言外にそう言われているような態度だった。本当は会話すらしたくなさそうだったが学園側から俺の事を前もって言われていたのか仕事だけはしっかりするようだった。
「はい」
別に歓迎されるとも思っていなかったから手短に終わらせようとさっき貰った身分証を見せた
「入れ」
確認が終わったのか男は不満そうな態度を隠そうともせず俺に入室を許可した。
男の前を通り過ぎ最初の筆記試験が行われるであろう部屋に入る
ガラガラ
思ったりよりドアを開ける音が大きく響いたので部屋の中にいた人達の視線がこちらに向いた
へぇ〜
教室の中から集まってきた視線の種類に思わず口元がニヤけそうになってしまった。
ざっと感じた限り嫌悪感や侮蔑の視線が6割ほど。俺の髪や親からでも俺の存在を聞いていたのだろう貴族だったらありそうだ。そして、こちらの様子を窺うような観察する視線が3割程度。そして全く興味なさそうなのが1割か。
もっと嫌われているものだと思っていたけどこの髪を見てもあんまりそんな事はないんだな
想像していたよりマシだったのでまた入口で止まっていたのだが後ろから少し怒りの篭った
「はやく入りなさい」
そう言われて後ろを振り返るとそこには、燃えるような紅の髪を後ろで束ねスッと細められた双眸でこちらを見ている女性が立っていた。入学試験の試験官であろうその女性は、再び固まってしまった俺に対して
「いいから入りなさい!」
そう怒鳴ると右脚で俺の腹に蹴りを飛ばしてきた。
その瞬間、避けることは出来ないスピードとタイミングだったのを理解した俺はとっさに右腕を鳩尾を守るように差し出した
「ぐっ」
重い衝撃が右腕に響き身体が後方に押された。
「ほぅ?」
自分の蹴りを防がれたのに驚いたのか女性から意外そうな声が上がった
「いきなり何するんすか」
幾ら何でも蹴りはないだろうと思い聞いたのだがその女性はアッサリと
「ドアの前に立っていて邪魔だったのと噂の受験者がどんなものか確かめただけよ。わかったらさっさと座りなさい」
そう言うと女性は、部屋の前方にある黒板の前に歩いていった。
その間に俺も、自分の席であろう空いていた1番後ろの端の席に座った。隣の席に座っていたのは、先ほど俺が部屋に入ってきたときに数少ない興味なさそうな視線を送ってきたブラウンの髪の女の子だった。
「よろしく」
「………」
軽く挨拶してみたのだが女の子は俺のことなど目に入っていないかのこどくスルーされてしまった。
「今回試験官を務めるエクシア・ラーヘンドよ。よろしく頼む。それではこれから筆記試験のための紙を配るから静かにしなさい」
エクシア先生が名乗った時、室内が一瞬ざわついた。どうやらあの先生は有名な人らしいが俺は全く知らなかったので首を傾げていたがその後に続いた一言で部屋の中は一気に緊張感に包まれた。
紙が配り終えられ全員の視線がエクシア先生に向けられると
「それでは試験開始!」
開始の合図が告げられた瞬間、みんな一斉に試験に取り掛かった。
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