第2話 魔女
「うぅん」
ずいぶん長い間眠っていたような気がする。眼を開けるとそこは見慣れない部屋だった。
「どこだここ?」
何故こんな所で寝ていたのか全く思い出せない。確か俺は教会で…
「そうだ!」
自分の記憶を手繰り寄せ教会での出来事を思い出すと慌てて自分の左手をみた。そこには、教会での記憶と同じ黒い紋章が刻まれていた。
「はぁ…あれは夢じゃなかったのか」
何か悪い夢だと思いたかった。でも、じゃあ何で俺はこんな所で眠っていた?確か、教会でこの紋章が拡がってそこから俺の意識はなくなっている。
「とりあえず状況を確認するか」
ベッドから起き上がり窓の外を覗くと、そこには見慣れた村はなく一面森が広がっていた。
「本当にどこなんだここ?」
全く状況が理解できず混乱していると部屋の扉が開いた。
「あら?ようやく起きた?」
部屋に入ってきたのは若い女の人だった。女の人はとても美人だったが俺の目は他の所に釘付けだった。
「黒い髪…」
黒い髪の毛の人を初めてみたのだ。女の人は背中まで伸びた綺麗な黒髪をしていた。俺は、村の人達や外からくる人達の中にも黒い髪の人はいなかったので驚いた
「ああ、これ?別にそんな気にすることじゃないでしょ」
女の人は、自分の前髪を摘みクルクルとしている。そして女の人の次の言葉で俺はビックリする事になった。
「それに、あんたも黒髪だし」
一瞬、言葉の意味が理解出来なかったが直ぐに慌てて窓ガラスで自分の髪色を確認すると女の人の言っていた通りに黒色になっていた。今朝は間違いなくブラウンだったのにも関わらずだ。
「な、なんで…」
俺があまりの驚きに固まっていると女の人が話しはじめた
「そりゃあ、その左手のが原因だと思うわよ。私の時もそうだったし」
そう言う女の人の左手の甲には俺の紋章とは微妙に形は違っているが黒の紋章が刻まれていた。
「黒の紋章…」
思わず口から溢れてしまった
「そうゆうことよ。あんた…そう言えばまだ名前を聞いてなかったわね。私の名前は、ミルラースよ。ミルって呼んでくれていいわよ」
そう言えば名前を聞いていなかった。ミルラースって言うのか
「よろしくお願いしますミルラースさん。俺の名前は、レイって言います」
こちらも自己紹介をしてみたのだがミルラースさんは何か言いたそうだ
「ミルって呼んでって言ったでしょ。これからはそれ以外の呼び方は禁止だからね」
ミルラースさんはこちらに詰め寄りながら呼び方を訂正してきた。有無を言わさぬ雰囲気だったので俺は頭を必死に縦に振って頷いた。
「それにしてもレイ、あんたホントに10歳なの?やけに大人びてるわね」
俺の態度に疑問を覚えたのかミルさんが首を傾げている。そんなに大人びてるつもりは無いけど親が居なかったから自然とそんな風になったのかな?
「そうですか?自分ではあんまりそんな感じしませんけど」
「いやいや、普通10歳でそこまで敬語使えないから。しかも目が覚めて知らない所にいるのにすごく落ち着いてるし」
ミルさんにそう言われて俺もようやく思い出した
「そ、そう言えば!ここはどこなんですか⁉︎あの後どうなったんですか⁉︎」
1番大事なことを聞いていなかった。真っ先に聞くべきことだったのに
「ふうっ。ようやく本題に入れるわね」
待っていましたとばかりにニヤッと笑ったミルさんは部屋に置いてあった椅子に座ると話しはじめてくれた。
「それじゃあ、まずはあんたが気絶した後の話からしようかしら」
「よろしくお願いします」
「まず、あんたの左手の紋章が暴走した事は覚えているわよね?」
ミルさんは真剣な目で俺の目と左手の紋章を見ながら質問してくる
「は、はい。突然左手に痛みが走ってその後に気を失いました」
「なるほど…。じゃあ説明するけどあの後暴走したあんたの紋章は、教会を丸々消滅させたわ」
あっさりとトンデモナイことを言うミルさん。あまりの事実に固まっていると
「でも、大丈夫よ。死者は1人も居なかったから」
それを聞いて少しだけ安心したがそれでも教会を消滅させただなんてこの紋章は一体何なんだ
そこでふと気になる事があった
「そう言えばミルさんは、どうして俺のことに気づいたんですか?」
あの村の人では無さそうだし村に来たことある人でもなさそうだ
「それは私にも良く分かってないけどあんたの力が暴走しはじめた時、直感て言うかなんて言うか分からないけど何か紋章が疼いたような感じがしたのよ。はじめて感じた同種の気配とでも言うのかしらね。それで気になってその気配の下まで行ってみたら抉られた地面とその中心に倒れてたあんたが居たってわけ」
ミルさんの話を聞けば聞くほど、この紋章の事が怖くなった。地面を抉る力なんてどうすればいいんだよ…
「そ、それでその後は?」
「その後、教会の神父やら村長がきてあんたを殺そうとしたのよ」
サラっとすげぇ衝撃的なことを言われたんだが
「じ、冗談ですよね…」
「残念ながらホントのことよ。あの村の大人達は教会を消したあんたを異端児として殺そうとしたのよ」
あまりの事実に固まってしまったがだったら何で俺は生きてるんだ?
「ミ、ミルさんが助けてくれたんですか?」
俺が生きてる理由なんてそれしか考えられなかった。でもどうして?
「そうよ。どうして?って顔してるわね。まあ、初めてみる同じ紋章を持ってる人だし何より自分の意思でそうした訳でもないのに殺されるなんて理不尽すぎると思ったのよ」
ミルさんが良い人で本当に良かった。俺は嬉しくなった。
「助けてくれて本当にありがとうございました。」
「気にしないでいいわ。それにただ助けた訳でもないから」
ただ助けた訳ではないその言葉を聞いて思わず固まってしまった。これから何をされるんだろうか
「そんな怯えないでよ…別に怖いことする訳じゃないんだから」
俺がビビっていたのを感じ取ったのかミルさんがショックを受けたようにそう言ってきた
「じ、じゃあ何をすれば」
恐る恐るそう聞くとミルさんは突然立ち上がり
「レイ!あんたには此処でその紋章を使いこなせるよう修行してもらうわ!」
…………………はい?
「………………はい?」
意味が分からなかった
「聞こえてたでしょ。あんたには修行してもらうって言ったの」
俺の聞き間違いでは無かったらしい。でも何で修行なんて
「どうしてですか?」
「それはね、まずこの紋章は悪魔の使いって言われてるのよ。歴史上でもこの紋章が現れたのは私とあなただけのはずよ」
悪魔の使い…それに歴史上2人しかいないなんて。あまりの事実に打ちひしがれていたんだが気になった事があった
「でも、ミルさんが産まれるより前にはいたんじゃないですか?」
ミルさんは20すぎくらいに見えるので他にもいるのでは無いかと思ったのだが
「それは無いわ。まあ、居たとしても分からないけど…」
なぜそこまで断言できるんだろうか?
「どうして言い切れるんですか?」
「あんた本当に10歳なの?まあいいわ、教えてあげる」
俺があまりに質問するせいかミルさんが訝しげに俺を見たがそんな事を言われても本当に10歳なんだから仕方ない
「それは、私が500年前から生きているからよ」
…………………はい?
「………………はい?」
またしてもよく分からない事を言われてしまった。500年前から生きてる?どうみても20すぎにしか見えないし大体人間は500年も生きられない
「まあ、そりゃあそう思うだろうけどそれにはちゃんと理由があるのよ」
俺が理解出来ないことが分かっていたのかミルさんは更に詳しく説明してくれた。
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