第5話 翌朝
私の体質なのかもしれないが、どんなに疲れていてもピタリ2時間で目が覚めて、何も問題なく行動出来る。今日もいつも通り2時間でバッチリ。遅く寝たわりには起きた時間はいつも通りだった。
「さて、朝ご飯……あっ」
私はいきなりレオンの扱いに困ってしまった。ここは女子寮。むろん男子禁制である。
朝ご飯は寮内の食堂で食べることになるのだが、さすがにレオンを連れてはいけないだろう。ここは職員も住む場所なので子供連れも見かけるが、私がそれをやったらあっという間に寮内に噂が広まる。まずいいことは無い。
「とりあえず、『魔法解除』」
暢気にスースー寝息を立てていたレオンに掛けていた魔法を解除すると、私は大きくノビをした。
「さぁて、どうしたもんだか……」
思案にくれていると、遅れてレオンが目を覚ました。
「ふぁーあ……おはよう」
レオンが大きなアクビをして、ベッドの上に身を起こした。
「はい、おはようさん。困ったちゃん」
私はそう言って小さく笑った。
「ごめんね。本当に……」
いきなりシュンとしてしまった彼の姿を見て、私は不覚にも胸に何かが刺さってしまった。いかん……。
「あ、朝ご飯どうするの?」
誤魔化しついでに私がそう言うと、レオンは本当に申し訳なさそうな顔をした。
「男子寮で食べるよ。お願いなんだけど、この部屋から女子寮の外まで連れていって」
レオンはそう言って両手を合わせた。
「わかった。まだ朝早いから人が少ないし、行くなら今よ」
そう言って、私は部屋のドアをそっと開けて廊下の左右を見る。人の姿はない。
……よし、今だ!!
「ちょっと荒いわよ!!」
私はレオンをベッドから引きずり降ろすと、そのまま小脇に抱えて「飛行」の魔法を放った。足が床から浮きそのまま寮の廊下を一気に飛ぶ。
「うわっ、ちょっと!?」
何か言うレオンは無視して、曲がりくねった寮の廊下を一気に飛び、閉ざされた寮のドアをブチ破って外廊下に出る。
こんなもんかな……。
私はゆっくりと地面に降りた。
「イライザって、結構アクティブなんだね……」
息も荒く外廊下に立ったレオンが、憔悴した様子でそう言った。
「フフフ、私がどこかのお嬢様だと思っていたの?」
思わず両手を腰に当てながら、私はそう言い放ってやった。
「でも、助かったよ。これから男子寮に戻るけど、そっちは自力で何とかするよ」
息を整え、レオンがそう言った。
「当たり前でしょ。男ならそれくらいなんとかしなさい。私は引き続きあなたを元に戻す方法を考えてみるわ」
そう言って、私はビシッと親指を立てて見せた。
「ありがとう。じゃあまたあとで」
レオンと別れ、私は派手にぶっ壊した女子寮のドアを元に戻し、なぜか鼻歌交じりに寮の食堂に向かったのだった。
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