第17話「魔物進行の阻止(殲滅)」

「獣王様!王都に魔物が攻め込んできます!その数約1万!内3割はSSランクです!」


 その報告が王国騎士によってもたらされた。

 もちろん1万の魔物が攻めてくるのは脅威であり、内3割はSSランクなのだ。かなりの脅威である。


 その報告を聞いた者は慌て、嘆いている。

 中には絶望の表情を浮かべている者もいる。


 そんな中、莫大な量の魔力と殺気が訓練場を駆け巡った。

 もちろん慧だ。


 魔力に当てられ失神した者は少なくない。

 そこで慧が口を開く。


「やっとゆっくり出来ると思っていたのに……なに?滅ぼされたいのか?」


 その言葉を聞いた訓練場にいた者の考えは、全て一つになったという。


(((((あ、そう言えばこの人がいたな。この人がいて負けることがあるのだろうか)))))


 と。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 10数分後、慧たちは王都の正門前に来ていた。

 後ろには7百程の王国騎士が控えている。


 騎士たちは緊張した面持ちでいるが、慧たち女子組のみは武器も持たずに雑談している。


 何故そんなことをしているのか、と思っている騎士は多いだろう。

 理由はとても簡単で


『ちょっとイラついてるから、あいつら全部俺が潰す。いいよな?』


 と素晴らしい笑顔でシルヴィらに告げたのだった。


 ちなみに、慧の武器は「神竜刀・夜桜」から帝具である「竜爪刀・無羅魔裂ムラマサ」になっている。


 帝具とは、神が使う専用の武器が神器であるように、竜帝が使う専用の武器の事だ。

 性能は以下の通りだ。


「竜爪刀・無羅魔裂ムラマサ

 特集能力・・「防御無視」「神羅万象」「魔障壁無効化」「万物絶対裂断」


====================


「防御無視」

 防御力を無視して直接ダメージを与えることが出来る。


「神羅万象」

 神以上の者が扱うことの出来る能力。全ての事象を思うがままに出来る。


「魔力障壁無効化」

 魔力障壁を無効化して攻撃出来る。

(魔力障壁とは、魔力を1箇所に集中させて身を守ることが出来る技能であり、練習すれば魔法の才がない限り習得できる)


「万物絶対裂断」

 万物切断の強化版。全てを切り裂く事が出来る。


====================


 今、慧の目の前には大量の魔物試し斬りの的が押し寄せている。


「さあ、殺戮ゲームを始めよう。勿論、内容はお前達が生き残れるかどうかだ」


 慧は凄惨な笑みを顔に貼り付け、魔物の群れに飛び込んでいった。


 これが、後に悪魔の大量虐殺フェスティバルと呼ばれる出来事であった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 魔物を切り倒し始めて数分、既に残りはSSランクの魔物だけになっていた。

 最初は魔族などの関連性が無いかを《マップ》で確かめていた慧だが、この魔物共はただ湧いて出てきただけだった。


 慧の《マップ》の認識範囲は半径10kmに及び、範囲内での見落としは必ずと言っていいほどない。


「さて、後はお前達だけだ。せいぜい楽しませてくれよ」


 完全に戦闘狂の言葉である。


 言うと同時に魔物の後ろに出現し、首を刎ねる。

 魔物は自分が殺されたことを理解しないまま死ぬ。

 それを数度繰り返した慧の顔は、失望感で染まっていた。


「はぁ、流石にここまで差があると面倒だな。一気に焼き払うか」


 SSランクの魔物と戦う為に雑魚(と言っても、王国にとっては脅威でしかないが)を一掃したが、その魔物が期待はずれだったのだ。


「《竜帝化》」


 魔力に覆われた慧は一瞬で竜の姿になり、口元に魔力を集めた。


 魔物は格の違いを悟って動けなくなっている。


「期待ハズレだ、死んで詫びろ。《混沌の息吹カオスブレス》」


 次の瞬間、真っ黒な魔力が辺りを黒く染め上げた。

 目を開けると先程までいた大量の魔物は存在しておらず、そこの見えない大きな穴が出来上がっていた。


 ちなみに、この大穴が後の観光名所になるのは、また別の話。


《混沌の息吹》は《分解魔法》が付与されていて、触れた物全て、魂さえも消し去るという凶悪な魔法だ。


 通常は死んだ者の魂は輪廻転生の輪に加わるが、この魔法を受けた者は輪廻転生が出来なくなっている。


 今のところ人に向けて使うのはハイランド王国のみの予定だが、慧の仲間を傷つけたりした場合は躊躇いなく撃つであろう。


「さて、ゴミ掃除も終わったし帰るか」


 目の前の惨状を見て見ぬ振りをし、慧はシルヴィたちの元に戻って行った。


 流石にここまで強力だとは、本人も予想していなかったのだ。


「おーい、今戻ったぞ……って、なんだよ、みんなしてその目は」


 戻った慧は、シルヴィたち+王都の冒険者にジト目を向けられていた。

 当たり前である。あれだけ破壊したのだから。


「サトル、何か言うことは無い?」

「すみません、あそこまで威力が高いとは思っていなかったです」


 笑顔だが目が笑っていないシルヴィを見て、慧は直ぐに土下座した。

 何故だろう、シルヴィには逆らえる気がしない。


「まあいいじゃない。この国の危機は去ったわけだし」

「そうだねー。でも、少しやり過ぎ感は否めないよね」


 渚沙と星来がフォローを入れる。

 星来は無意識に止めを刺しにいっていたが。


「よし、もうこの事は気にしない。さっさとライゼルに報告しに行こう」

「「「反省はしっかりしてね」」」

「……はい」


 こうして、ライセン王国の危機は去った。

 街道には甚大な被害が出ていたが。

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